本研究によって以下に述べる3点(1)~(3)の成果が得られた。 (1)肝細胞癌特異的腫瘍関連抗原における細胞傷害性T細胞(CTL)エピトープとヘルパーT細胞(HTL)エピトープの同定;肝細胞癌に特異的な各種腫瘍関連抗原からCTLエピトープを同定した。またアルファフェトプロテイン(AFP)とヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)のアミノ酸配列からヘルパーT細胞(HTL)のエピトープとなりそうな配列部位についてコンピュータソフト(TEPITOPE)を用いて予測し、このうち日本人に多いとされるHLA-class II 分子の結合モチーフをもつペプチドを作製し、IFN-gamma enzyme-linked immunospot(ELISPOT)アッセイ法、HLA-class II分子への結合実験により、HTLエピトープを含むと考えられるペプチドを同定した。 (2)肝細胞癌患者におけるCTL/HTLを介した抗腫瘍免疫反応の解析;上記ペプチドを用いて、肝細胞癌患者の末梢血リンパ球における免疫反応を解析し、それぞれのペプチドに対して陽性反応を示す患者の頻度、その臨床的特徴を明らかにした。また、ペプチドに対する免疫応答を増強する肝細胞癌の治療方法を同定した。 (3)肝細胞癌免疫治療に有用なペプチドの選定;肝細胞癌患者の末梢血リンパ球において高頻度に免疫反応が認められるエピトープをもつペプチドのHLA拘束性、細胞傷害活性、T細胞をペプチドで刺激した際の各種サイトカイン産生能を測定し、肝細胞癌免疫治療への応用が可能と考えられるペプチドをAFPとhTERTにつき、それぞれ1個ずつ選定した。また、これらのペプチドとこれまでに同定したHLA-class I拘束性のペプチドを人工的に結合し、ロングペプチドとして生体に投与するための条件設定を行った。
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