研究代表者は、抗真菌剤GriseofulvinがC 型肝炎ウイルス(HCV)増殖抑制効果を有するという研究成果を基に、過去2年の研究期間において、様々なGriseofulvin誘導体を作製し、その抗HCV活性について検討を行ってきた。その結果、共通母核を有し、一部の官能基の違いから、抗HCV活性が大きく異なる数種のGriseofulvinの誘導体を見出した。そこで、本年度は、抑制活性が強いGriseofulvin誘導体と抑制活性のほとんどないGriseofulvin誘導体のアフィニティービーズを作製し、これら2つビーズを使って抗HCV活性に関与するGriseofulvinの標的タンパクを同定するための実験を計画、遂行した。まず、その基礎実験として、Griseofulvin誘導体をタンパク精製アフィニティービーズに結合させるために、最適なリンカーの検索を行った。具体的には、幾つか異なったリンカーを結合させたGriseofulvinを作製し、それら化合物の抗HCV活性について、HCVサブゲノムレプリコン細胞を用いて評価した。抑制活性に影響しないものがアフィニティービーズ精製に最適なリンカーとなるが、これまで合成したリンカーを有するGriseofulvinのいずれもが、リンカーを付けることにより、抗HCV活性がGriseofulvinに比べ著しく低下した。従って、これまでのところ、抗HCV活性を保持しつつ、アフィニティービーズに結合させる最適なリンカーを見出すことが出来ていない。そのため、現在、リンカーの種類、挿入部位について引き続き検討を行っている。
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