研究課題
本研究は、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の病態形成、とくに肝硬変・肝細胞癌への進展におけるc-Jun N-terminal Kinase(JNK)の役割を明らかにし、NASHの治療ターゲットとしてのJNKの可能性を分子レベルで探索することを目的としている。平成23年度には、NASH/肝線維化モデルの解析において、申請者がすでに報告している「免疫担当細胞のJNKの役割」を除外したうえで、肝細胞や肝星細胞など非血液系細胞のJNK isofomの機能を評価するために、骨髄移植によるキメラマウスの作成を行った。レシピエントが野生型、JNK1-/-、あるいはJNK2-/-マウスで、免疫担当細胞はいずれも野生型であるキメラマウスを作成し、これらをCDAA dietによるNASH/肝線維化モデルにおいて比較することにより、NASHの病態形成における非血液細胞のJNK isoformの役割について検討を行った。1.インスリン抵抗性についての検討グルコース負荷テスト、インスリン負荷テストにより検討したところ、キメラマウス間において明らかな差はみられなかった。2.肝脂肪化についての検討肝組織切片におけるOil RedO染色により評価を行ったところ、キメラマウス間において明らかな差はみられなかった。3.肝細胞障害についての検討血清中トランスアミナーゼの測定により評価を行ったところ、キメラマウス間において明らかな差はみられなかった。4.肝炎症誘導についての検討肝組織中の各種炎症性サイトカインの遺伝子発現により評価を行ったところ、レシピエントがJM1-/-マウスにおいて炎症の誘導が低下している傾向がみられた。5.肝線維化についての検討Sirius red染色および肝組織中の各種線維化関連遺伝子の発現により検討を行ったところ、レシピエントがJNK1-/-マウスにおいて線維化の誘導が低下している傾向がみられた。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、NASHの病態形成、とくに肝硬変・肝細胞癌への進展におけるJNK1およびJNK2の役割を明らかにし、NASHの治療ターゲットどしてのJNKの可能性を分子レベルで探索することである。これまでに、申請者らは免疫担当細胞におけるJNKの役割を明らかにしてきたが、本研究により肝細胞や肝星細胞など非血液系細胞においてもJNKが重要な役割を果たしている可能性が明らかとなってきた。
これまでのin vitroおよびin vivoの検討より、NASHの病態形成には非血液系細胞のなかで肝細胞以外に細胞種におけるJNK1の関与が中心となっている可能性が示唆されてきた。今後、本研究では肝星細胞におけるJNK isofomに焦点をしぼり、その炎症誘導・線維化における役割についてin vitroおよびin vivoの検討を行う予定である。また、肝線維化のみならず肝癌の形成についても解析を行う予定である。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Proc Natl Acad Sci U S A
巻: 109 ページ: E1369-76
DOI:10.1073/pnas.1202464109
Hepatology Research
巻: 41 ページ: 683-686
10.1111/j.1872-034X.2011.00814.x