現在までに、肝移植後患者末梢血を用いた制御性T細胞(Treg,Tr1)およびアロ特異的CD4陽性T細胞分画定量、マイクロキメリズム解析、HCV特異的免疫応答解析方法を確立し、解析が可能となっている。キメリズムについては移植後2週間までは原疾患に関係なくNK細胞、B細胞、単球などにて2-3%程度存在する場合が多かったが、4週目以降は0.1%以下になっていた。移植後1年以上経過した症例では、ほとんどの症例で非常に微量となっていることが明らかになった。しかし、原発性胆汁性肝硬変肝移植症例でキメリズム陽性となっている症例が多く認められていることが判明した。一方C型肝炎患者ではキメリズム陽性者は少ない傾向にあった。HCV抗原特異的T細胞応答については移植後C型肝炎27例の解析を行い、ウイルス排除症例でT細胞応答が強力で、慢性肝炎症例では弱いことが明らかになった。ウイルス陽性症例でも肝炎活動性の低い症例では移植1年後から3年後までの間であればT細胞応答が強い傾向にあった。しかし3年以上経過すると低下する傾向となっていた。Tregについてはウイルス駆除例で低頻度であることが多かった。またウイルス抗原特異的な免疫応答の強さとTregには反比例の傾向があった。制御性T細胞のうち、Tr1細胞の頻度はウイルス排除例では慢性肝炎症例と同様であったが、ウイルス陽性でも肝炎活動性の低い症例で少ないことが明らかになった。Tr1細胞は、ウイルス存在下でウイルス性肝炎の病態を修飾している可能性があり、よりウイルス肝炎の経過に関係している可能性が高いことが示唆された。
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