研究課題
研究代表者は昨年度、生体肝移植の摘出肝臓より胆管上皮細胞と肝臓浸潤単核球を分離採取し、TLR3リガンドで刺激された単球が産生するIFN-aの存在下においてTLR4リガンドで刺激されたNK細胞が自己胆管上皮細胞を傷害することを報告した。原発性胆汁性肝硬変(PBC)は慢性非化膿性破壊性胆管炎を病理学的特徴とする臓器特異的自己免疫疾患であるため、この所見はPBCの発症や病態形成に重要と考えた。そこで今年度は実際に14名のPBC症例ならびに対照として健常肝臓6名、PBC以外の肝疾患22名における胆管周囲でのNK細胞の浸潤を、NK細胞特異的細胞表面マーカーであるCD56を免疫染色することで確認した。その結果PBCでは対照と比較して有意に門脈内の小細胆管周囲にNK細胞の浸潤を認めることが明らかとなった。次にTLR3リガンドで刺激された肝臓浸潤単球の産生するIFN-aの産生量が、PBC症例8名と対照肝疾患14名で差を認めるかをELISAで確認した。その結果PBCでは対照と比較して有意に単球がIFN-aを産生することも明らかとなった。以上の結果よりPBCでは、自然免疫(TLR3リガンド、TLR4リガンド)の存在下で自然免疫担当細胞が活性化されており、NK細胞が自己胆管上皮細胞を傷害することが病態の発生や維持に大きく関与していることが明らかとなった。PBCはこれまで臓器特異的自己免疫疾患として獲得免疫(T細胞、B細胞)の重要性に注目されがちであったが、今回の結果は、自然免疫の環境要因も疾患感受性を決定しており、恐らくは腸管から経門脈的に供給されるTLR3リガンド、TLR4リガンドをいかにコントロールするかが治療に直結することを示唆している。
2: おおむね順調に進展している
当院外科より安定した生体肝移植における摘出肝の検体供与を受けることができているため。
当初の交付申請書に記載したとおりに今後も推進していく方策である。研究計画の変更や問題点は認めない。
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