研究概要 |
HepG2肝癌細胞株からCD133陽性細胞を単離し、肝癌幹細胞と同定した。ラットより皮下脂肪組織(SAT)、内臓脂肪組織(VAT)を採取し、コラーゲンゲルに包埋し3次元培養を行った。ゲル上にCD133陽性/陰性細胞を30万個ずつ播種し、脂肪組織片との共培養群と単独培養群を作製し比較検討した。 単独培養では、CD133陽性細胞は陰性細胞より増殖が遅く、一週間で同程度となる。脂肪組織との共培養では、CD133陽性細胞の方が陰性細胞よりも強く増殖が抑制された。ゲル内への浸潤像はいずれも認められなかった。免疫組織化学では、EカドヘリンはCD133陽性/陰性細胞の単独培養群で部分的に発現を認めたが、脂肪組織との共培養では発現が減弱する傾向にあった。FilaminAは、CD133陽性/陰性細胞の単独培養では同程度に発現していた。CD133陽性細胞では、VATとの共培養で発現が軽度抑制され、SATとの共培養で発現が亢進していた。一方CD133陰性細胞は、VATとの共培養で発現は変わらず、SATとの共培養で発現が軽度減弱していた。アポトーシスは、Cleaved caspase-3の発現がほぼ認められなかった。 すなわちCD133陽性細胞は、脂肪組織により増殖が抑制される傾向にあり、アポトーシス、浸潤に変化はなかった。遊走はVATとSATにおける動態に相違が認められた。Western blotでは、FilaminA, Laminin-5, Eカドヘリンの発現に有意差は認められなかった。肝癌細胞と脂肪組織の接触/非接触条件下による差異の可能性が示唆され、さらなる検討が必要と考える。 また、培養上清中のadipokineは、SATに比しVATでadiponectinが多く、leptin, resistinが少なく産生されていたが、CD133陽性/陰性細胞との共培養によって変化は認められなかった。
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