【研究の目的】C型肝炎ウイルス(HCV)感染が宿主の脂質プロファイルを変化させることを報告した。本研究ではHCV複製効率の上昇や感染効率の上昇をウイルスのタンパクが、宿主である人の脂質代謝経路に影響を及ぼしている可能性をin vitroの系で検証し、新たな治療標的を見出す。【本年度の成果】HCV感染によりVery Low Density Lipoprotein (VLDL)やIntermediate Density Lipoprotein (IDL)から中性脂肪をぬきとりLow Density Lipoprotein (LDL)にする酵素Hepatic Triglyceride Lipase (HTGL)は、HCV蛋白を発現しているOR6細胞で抑制されていることを明らかにした。LDL、まで代謝されるなかでアポE蛋白もVLDLなどから抜き取られるが、これはHCVが肝細胞に感染するうえで重要であり、HTGLの低下がHCVの感染性に有利となっている可能性が示された。HTGL、の発現が低下することでHCVの増殖が活性化されるか否か、OR6細胞にHTGLを遺伝子導入して検討したが、HTGLを肝細胞での強発現しても、HCVの増殖に影響しないことを見出した。以上から、HTGLの発現の変化は、ウイルスの増殖より感染性へ影響することが予測された。一方、High Density Lipoprotein (HDL)のコレステロール量を調整しているコレステロール・エステル転送蛋白(CETP)やレシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)の変動は、in vitroの系ではHCV蛋白の発現の有無に左右されていなかった。患者血清を用いた検討でもCETPの発現は、肝線維化など肝障害の程度により、変化していることを明らかにした。今後はHTGLの発現をコントロールする物資の検索と、その効果を検討する。
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