研究課題/領域番号 |
22590743
|
研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
斉藤 聡 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (00275041)
|
研究分担者 |
中島 淳 横浜市立大学, 附属病院, 教授 (30326037)
桐越 博之 横浜市立大学, 附属病院, 助教 (80347294)
|
キーワード | ウイルス / 内科 / 感染 |
研究概要 |
【研究の目的】これまでC型肝炎ウイルス(HCV)感染が宿主の脂質プロファイルを変化させることを報告した。本研究ではHCV複製効率の上昇や感染効率の上昇をウイルスのタンパクが、宿主である人の脂質代謝経路に影響を及ぼしている可能性をin vitroの系で検証し、新たな治療標的を見出す。 【本年度の成果】HCV感染によりVery Low Density Lipoprotein(VLDL)やIntermediate Density Lipoprotein(IDL)から中性脂肪をぬきとりLow Density Lipoprotein(LDL)にする酵素Hepatic Triglyceride Lipase(HTGL)は、HCVタンパクを発現しているOR6細胞で抑制されていることを明らかにした。LDLまで代謝されるなかでアポE蛋白もVLDLなどから抜き取られるが、これはHCVが肝細胞に感染するうえで重要であり、HTGLの低下がHCVの感染性に有利となっている可能性が示された。HTGLの発現を回復させることによる影響を、(1)脂質プロファイルの変化、(2)HCV複製に与える変化をそれぞれ検討した。HCVタンパクを発現しているOR6細胞の脂質プロファイルはもとのVLDLレムナントの領域が低下し、HCV-RNAを除去したOR6c細胞と同様の脂質プロファイルを認めた。またHCVの複製はHTGLの発現には影響されないことを確認した。これまでの結果からHCVタンパク発現によりIDLを代謝するHTGLの発現低下がHCVの感染性に有利になることを予測している。実際の感染患者においてHTGLの発現が低下しているかを、人検体を使用してパイロット試験を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
人検体における解析がとん挫している。血中HTGLを測定するにはヘパリンか採血が必要であるが、これを行うための根拠となる事前の検討が必要と考えている。現在、生検した肝組織中のHTGLの評価方法を検討している。
|
今後の研究の推進方策 |
現在in vitroの系を用いた結果は論文発表を準備している。今後肝組織中のHCV量とHTGLのmRNAやタンパク発現レベルの相関を比較検討することで、in vitroの結果と矛盾しないかを確認する。またHTGLの発現効率を上げることが宿主に有利であると考えている。今後高脂血症を持つC型慢性患者においてHTGLの発現を誘導するとされているフィブラート系の治療薬を用いることで、C型慢性肝炎の治療効果がより改善されるかを検討することを視野に入れている。
|