HCV感染は、リンパ増殖性疾患(LPD)や自己免疫性疾患などのB細胞異常に関与する。我々はHCV感染患者のB細胞中にHCVが高頻度に検出され、このB細胞へのHCV感染・吸着がLPD関連マーカー異常やIFN治療抵抗性に関連すること報告しこのHCV感染によるB細胞異常の発症機序として、HCV E2蛋白のナイーブB細胞への結合が抗原非特異的異常活性化を惹起する可能性が報告され、更に我々はB細胞サブタイプ別のHCV感染・吸着状態を解析し、ナイーブB細胞の時点で既にHCV感染・吸着していることを確認した。今年度はHCV感染者におけるナイーブB細胞の異常活性化を解析する目的で、ナイーブB細胞での単一クローン増殖(Clonality)、またB細胞活性化関連の宿主遺伝子発現解析を行った。HCV感染者33例、健常人15例の全血からMACSシステムを用いてナイーブBと非ナイーブB細胞に分画した。その後IgH遺伝子CDR3領域のRT-PCR産物を用いたClonality解析を行った。更にB細胞活性化に関連する遺伝子CD80、CD86とクラススイッチ、体細胞変異に関連する遺伝子AIDのmRNA発現量を解析した。Clonality解析の結果から、ナイーブB細胞では単一クローン増殖が起こっていないことが確認された。非ナイーブB細胞での解析ではHCV感染者にのみIgM及びIgGクラスのMono-clonalityが確認され、すべてのクラスに0ligo-clonalityが検出された。Oligo-clonalityは健常者からも検出されたがその頻度は有意に低かった。更にHCV感染者のナイーブB細胞では健常者と比較し、活性化マーカーであるCD80が有意に高い発現を示し、CD86やAID発現も高い傾向があった。CV感染に伴うB細胞単一クローン増殖はHCV感染に伴うB細胞の抗アポトーシス、トランスフォームに起因するものではなく、対応抗原の決定していないナイーブB細胞の時期での抗原非特異的活性化が一因であると推察された。
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