研究課題/領域番号 |
22590747
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
池上 正 東京医科大学, 医学部, 准教授 (40439740)
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研究分担者 |
本多 彰 東京医科大学, 医学部, 准教授 (10468639)
松崎 靖司 東京医科大学, 医学部, 教授 (50209532)
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キーワード | 慢性肝疾患 / C型肝炎ウイルス / 脂質代謝 |
研究概要 |
昨年までのデータにさらに症例を追加し、また、インスリン抵抗性などの点からHCV感染患者との類似性が指摘されている非アルコール性脂肪肝患者(NAFLD)の血清を加えることによってそれぞれの病態の比較を行った。HCV群では、コレステロール合成を反映するラソステロール/コレステロール比については健常者と差がなく、また、胆汁酸合成を反映するC4/コレステロール比はHCV群で増加していた。さらに、LXRのリガンドとなる酸化ステロールは、HCV群で有意に増加していた。酸化ステロールの増加はNAFLD群でも有意であったが、コレステロール吸収は高コレステロール血症を伴うNAFLD群では低下していた(Ikegami T et al. in press)。以上より、肝細胞中のコレステロール貯留に対する防御的反応としての胆汁酸産生、酸化ステロール産生増加のメカニズムが考えられた。肝細胞中のコレステロール貯留を証明するため、肝生検標本(各群5例ずつ)を用いて、肝組織中のコレステロール量と、血清中のコレステロール量を測定したが、両者の間には正の相関関係があるものの、蛋白重量あたりの肝組織中コレステロール量は対照群とHCV群では有意な差は認めなかった。この乖離を説明する理由として、(1)症例数が少ない、(2)「肝組織中」のコレステロールが「肝細胞中」のコレステロールを正確に反映していない可能性があげられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小コホートでの脂質代謝プロファイルを血清マーカーを用いた検討にて、われわれが今まで得てきた大規模な疫学的データの解釈が可能になった。また、マーカー使用の妥当性を検証するために肝実質内のマーカー、コレステロール濃度を測定している。ここまでで得た仮説を証明するためのin vivo実験が終了すれば、現在までに主として動物実験で示されてきたHCVと脂質代謝の関わりについて客観的な情報を与える事ができる。
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今後の研究の推進方策 |
肝生検標本を増やして組織中の脂質代謝について解析を行うこと。また、HCV感染肝細胞(HepaRG細胞にHCVを感染させる)を用いて、HCV感染前後での脂質代謝の変化を検討する。
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