研究概要 |
mitochonndria障害と鉄過剰が誘導する酸化ストレスが,HCV肝発癌の一機序として重要であるが、鉄過剰状態がHCV自身に好ましい状況か否かは不明である。鉄過剰状態がHCV増殖に影響するかを明らかにするため、以下の検討を行った。I:HCVの全長遺伝子を組み込んだreplicon増殖細胞(OR6)にFeso4、Fe(NO3)3、FeCl2,FeCl3を投与しHCV活性とROSを測定した。一部には鉄負荷と同時にIFN,Vitamin Eを投与しHCV活性を確認した。また無血清培地を作成後holo-transferinを投与し、同様にHCV活性を解析した。II:酸化ストレスの関与と治療効果を明らかにするため,PegIFN/RBV投与前,2,4,12週目に尿中80HdG、フェリチンを測定し、EVR例(15例)とLVR例(10例)とで比較検討を行った。III:鉄負荷が誘導するミトコンドリア障害がMAVSに影響を与えるか否かを確認するため、鉄過剰食で6ヶ月飼育したHCVTgMのIPS-1をwestern blotで確認した。I:2価、3価鉄でもHCV活性抑制が確認されたが、ROS産生は2価鉄のみ確認された。この現象はholo-transferin投与でも同様であった。50%のHCV抑制効果を認め、ROS産生も確認された0.1uM FeCl2にてIFN投与を行うと更にHCV活性が抑制され、Vitamin E投与にて活性抑制はcancelされた。II:EVR例では、LVR例に比べてIFN投与開始2週目に有意な80HdG上昇(EVR:LVR16.5±2:13.2±1:P<0.05)が確認された。III;鉄負荷HCVTgMにてIPS-1発現は低下しており、ミトコンドリア分画での発現低下も確認した。in vitroでは、鉄負荷が誘導する酸化ストレス亢進はHCV活性抑制効果を示し、IFN効果を減弱させない。酸化ストレスの一過性冗進がEVR例に多いことより、少なくとも投与中の抗酸化効果能を有する薬剤併用は避けるべきである。HCV蛋白が肝内鉄過剰を誘導し、酸化ストレスを亢進させることでHCV増殖をcontrolしている可能性が考えられる。
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