研究課題/領域番号 |
22590750
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研究機関 | 独立行政法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
是永 匡紹 独立行政法人国立国際医療研究センター, 肝炎免疫研究センター, 室長 (70420536)
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研究分担者 |
是永 圭子 川崎医科大学, 肝胆膵内科学, 講師 (60420535)
日野 啓輔 川崎医科大学, 肝胆膵内科学, 教授 (80228741)
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キーワード | C型慢性肝炎 / 酸化ストレス / ミトコンドリア / 鉄過剰状態 / IFN / Hepcidin / PolyIC |
研究概要 |
HCVの全長遺伝子を発現するtransgenic mouse(TgM)では、酸化ストレス亢進を誘導し、hepcidin発現低下により肝内鉄過剰を形成し、更なる鉄負荷によって肝発癌が促進する。一方、in vitroでは、HCVと鉄負荷が誘導する酸化ストレスによりHCV活性が抑制されることも明らかにした。酸化ストレスがhepcidin発現、抗ウイルス効果に及ぼす影響を再検討するため、以下の検討を行った。HCVTgMにcontrol食、鉄負荷食、鉄負荷食/抗酸化剤(Vitamin E,CoenzymeQ10)投与を半年間行い、血清よりLC-MS/MS法にてHepcidin測定とBio-Plexにてサイトカインを網羅的に測定した。また、control食と鉄負荷食ではTLR3のリガンドであるpoly-IC(5mg/kg)投与し、2時間後に血清を採取しhepcidin,サイトカイン及びIFNβ産生能を測定した。鉄負荷HCVTgMではcontrol食と比較し、IL2,4以外のサイトカインが上昇し、鉄負荷に伴う特異的なサイトカインは存在しなかった。hepcidin発現も過剰鉄に対しても上昇していた一方で、肝内鉄濃度抑制が観察される抗酸化剤投与では、hepcidin発現は低下していた。また、性差により鉄負荷によるhepcidin発現上昇に有意な差が認められた。PolyIC投与によりIL6,THFαなどの炎症性サイトカインは上昇するも、control食に比べ軽度であり、hepcidin発現の上昇は認めなかった。IFNβ産生能は、PolyIC投与前後とも測定感度未満であったが、抗酸化剤投与では著明な産生亢進を認めた。HCVのhepcidin抑制は、長期間の酸化ストレス亢進によって、徐々に反応性が低下すると考えられる。また、抗酸化剤投与後にhepcidin発現が低下していることは、鉄過剰状態が解除された結果を示していると考えられ、hepcidin測定のみで鉄過剰状態を説明するのは困難である。IFNβ産生能が抗酸化剤投与にて上昇することより、過剰鉄がIFN signalに影響を及ぼす可能性があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、in vitroでの鉄過剰がHCV抑制をしても、ミトコンドリア機能は改善されず、逆に長期継続投与にてIFN signalingが低下することが明らかになり、論文作成に必要なdataがそろってきたため、計画通りに遂行していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに成果により、論文作成を行う。またミトコンドリア保護作用を有する薬剤を投与し同様な検討を行う。
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