研究概要 |
HCVの全長遺伝子を発現するtransgenic mouse(TgM)では、酸化ストレス亢進を誘導し、hepcidin発現低下により肝内鉄過剰を形成し、更なる鉄負荷によって肝発癌が促進する。一方、in vitroでは、HCVと鉄負荷が誘導する酸化ストレスによりHCV活性が抑制されることも明らかにした。酸化ストレスがhepcidin発現、抗ウイルス効果に及ぼす影響を再検討するため、以下の検討を行った。HCVTgMにcontrol食、鉄負荷食、鉄負荷食/抗酸化剤(Vitamin E, CoenzymeQ10)投与を半年間行い、血清よりLC-MS/MS法にてHepcidin測定とBio-Plexにてサイトカインを網羅的に測定した。また、control食と鉄負荷食ではTLR3のリガンドであるpoly-IC(5mg/kg)投与し、2時間後に血清を採取しhepcidin,サイトカイン及びIFNβ産生能を測定した。鉄負荷HCVTgMではcontrol食と比較し、IFNβ産生能は、PolyIC投与前後とも測定感度未満であったが、抗酸化剤投与では著明な産生亢進を認めた。IFNβ産生能が抗酸化剤投与にて上昇することより、過剰鉄がIFN signalに影響を及ぼす可能性があると考えられた。同様に鉄負荷HCVTgMにIFN投与を行ったところ、肝内鉄濃度は低下し、hepcidinが上昇し、肝内の酸化ストレスマーカーを改善させたため、IFN少量長期投与されたC型慢性肝疾患に対し、経時的にhepcidinや酸化ストレスマーカーであるdROM,BAPの測定を行った、投与開始3,6ヶ月でフェリチンは上昇傾向であったが、1年目にフェリチンは投与前値に改善し、hepcidinは上昇し、ウイルスの減少なしに鉄代謝は改善することが明らかになった。更にBAP/dROM比(酸化ストレスに対する抗酸化能)も上昇し、IFN長期投与は酸化ストレスや鉄代謝能を改善させることで、肝発癌を抑制する可能性が示唆された。
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