細胞内ポリアミン調節タンパク質ファミリーの1つであるアンチザイム2(AZ2)とがん細胞に高発現し、低酸素誘導転写因子HIF1αの活性を酸素濃度センサーPHD1を介して抑制するタンパク質CDR2が酵母Two-Hybrid法による解析により相互作用することが明らかとなり、特に臨床的に極度に血流の少ない膵臓がんの低酸素応答にこれらがどのように関連しているか解析しがん治療の標的分子を探索することを目的として研究を行った。 組織レベルでAZ2を検出するために抗体を作製予定であったが、新たにAZ2の抗体が販売されたためそれらを購入し組織レベルでAZ2を検出できるか調べた。しかし何れの抗体も内在性のAZ2を検出することはできなかった。現在ポリクローナル抗体の作製を再度検討している。このため予定を変更しCDR2とAZ2の結合様式の詳細について解析した。CDR2とAZ2各々の結合領域を決定するためCDR2は部分領域に対する完全長AZ2を、AZ2は相同性のあるAZ1とのキメラを作製し酵母Two-Hybrid法で解析した。その結果CDR2はロイシンジッパー領域を含むアミノ酸101~300番を、AZ2はC末端側のアミノ酸135~189番を互いの結合領域に決定した。さらにAZ2のアミノ酸135~189の領域内でAZ1と異なる8つアミノ酸の部位特異的変異導入解析を行ったところ、R140又はV174をAに置換するとCDR2へほとんど結合しなくなった。さらに興味あることに、AZ1においてこの2つの残基に相当するPl77とA211の両残基をAZ2と同様にするとCDR2に強く結合することがわかった。両残基は構造的に非常に近い位置に存在していることからもCDR2への結合に非常に重要な残基であると考えられる。 AZ2ノックアウトマウス膵臓のプロテオーム解析については現在進行中でありタンパク質同定までには至っていない。
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