近年の疫学研究により本邦における慢性心不全の約1/4は収縮能が保たれている拡張不全型心不全であり、収縮不全同様に予後が不良であることが明らかになってきている。以前我々は独自の心不全データベース(CHART-1)による観察研究から拡張不全例における栄養状態は心臓死と相関する独立予測因子であることを明らかにした。本研究は拡張不全例の栄養状態が既知の心不全マーカー・炎症マーカー、拡張能指標とどのような相関があるのかを検討するとともに、栄養状態の積極的な改善が拡張不全症例の予後に及ぼす影響を明らかにし、心不全症例における新たな治療戦略を探ることを目的としている。東北大学循環器内科では2006年10月から慢性心不全登録CHART-2の登録を開始し2010年3月までに総計10219例を登録した。平成23年度には登録症例の栄養状態の評価を血清アルブミン、総コレステロール、総リンパ球数のスコア化によるCONUTスコアを算出しデータベースの構築を完了した。そのうち心不全前段階であるステージB症例4051例における栄養状態による予後を検討し平成24年3月に開催された日本循環器学会総会で発表した。平成24年度はこれらの結果を元に論文を作成し、現在投稿中である。さらにこのデータベースを活用し、さらに介入研究としてエントリー時に栄養状態が正常な症例100例(正常群)、栄養状態低下症例200例(栄養低下群)を無作為に抽出、さらに後者を100例ずつ介入(栄養補充)群か観察群に振り分けることを行うことを目標とし、現在準備中である。
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