Ambulatory Arterial Stiffness Index(AASI)は動脈硬化と関連がある指標とされる。しかし、信頼できるAASIを算出するための、ABPの必要なデータ数について検討した研究は無い。そこで、今年度はABPの全血圧値および一部の血圧値について算出し、AASIの再現性および脳心血管死亡予後予測能を検討した。その際、古典的な動脈硬化の指標である脈圧(PP)も同時に検討した。 岩手県花巻市大追町の40歳以上の一般地域住民1542名(年齢40-93歳;女性63.4%)を対象とした。ABPは覚醒時、睡眠時ともに50分毎に測定し、AASIおよびPPを算出した。その後、一部のABPを利用して再度算出した。再現性の指標としてRelative Repeatability Coefficient(RRC)を採用した。これは全血圧値と一部の血圧値のみによる値の差の標準偏差(SD)を、値の2SDで除したものであり、大きいほど再現性が悪いことを表す。 利用するABPのデータ数が少ないほどAASIの再現性は悪化したが、PPの再現性はほとんど悪化しなかった。すなわち、削除するABPのデータ数を2、4、8、および16まで増加させたとき、AASIのRRCは10.2%、11.2%、17.0%および29.0%であったが、PPでは2.5%、3.4%、5.1%および8.1%であった。13.3年間(中央値)の追跡中に126例の脳心血管死亡が観察された。AASIと脳心血管死亡リスクとの間にU型の関連が認められた。しかし、ABPの削減を8から16に増やしたとき、この関連は有意ではなくなった。 24時間血圧データ数を削減したとき、AASIはPPよりも再現性が低かった。しかし、24時間血圧データ数が35以上であれば、AASIの脳心血管死亡の予後予測能には影響を与えないと考えられた。
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