研究概要 |
岩手県花巻市大迫町の地域住民1049人を本分析の対象とした。家庭血圧測定は日本高血圧学会ガイドラインに準拠し、朝と晩にそれぞれ一回ずつ1ヶ月間測定するよう指導した。各個人の全血圧値から、家庭血圧の平均値およびHASIを算出した。頸動脈病変はBモード超音波検査により測定した。総頸動脈の左右および遠位・近位の内膜中膜複合体肥厚の平均(Mean Intima-Media Thickness; mean IMT)およびプラークの有無を頸動脈病変の指標とした。 対象者の平均年齢は66.5±6.4歳、67.8%が女性、家庭血圧測定日数は25.3±3.9日、家庭血圧の平均値は収縮期125.6±14.1 mmHg、拡張期74.3±8.6 mmHgであった。HASIの平均値は0.57±0.16 unitであった。 Mean IMTとHASI との単相関係数は0.16(P<0.0001)であった。性別、年齢、Body Mass Index、喫煙、飲酒、LDH/HDL比、糖尿病、脳心血管病既往、降圧薬服用および収縮期家庭血圧を補正した重回帰分析において、HASIはmean IMTと有意に関連した(標準化回帰係数0.08, P=0.0051)。 しかし、頸動脈プラークに関しては有意な結果は得られなかった。頸動脈プラークを有する群(371人)と有さない群(678人)とで、HASIは同等であった(0.63±0.17 vs. 0.65±0.19 unit, P=0.17)。また、前述の各種交絡因子を補正した多重ロジスティック回帰分析においても、HASIは頸動脈プラークと有意な関連を示さなかった(P=0.73)。 一般地域住民において、家庭血圧により得られたHASIは各種危険因子とは独立してmean IMTと弱い関連があった。HASIは頸動脈病変の危険因子、あるいは予測因子となり得る可能性がある。
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