研究課題
本年度は人工基材表面上ヘアディポネクチンの高密度化学固定を行ない、ヒト血管内皮細胞および単核球を培養し、その接着・増殖性を検討した。●高密度蛋白質表面設計:まず、人工基材の設計では、円型ガラスにポリ(エチレン-CO-ビニルアルコール)共重合体を薄膜コーティングし、ついで表面水酸基をカルボジイミダゾールで活性化し、ついで蛋白質溶液に浸漬して蛋白溶液を高密度固定した。水酸基の活性化および蛋白質の固定化はX線光電子分析装置により極微表面層の元素分析より同定し、また蛋白質の高密度固定は、螢光標識蛋白濃度と表面螢光強度の相関より明らかにした。●細胞挙動:アディポネクチン、血管内皮増殖因子(VEGF)およびこれらの1:1の混合溶液による蛋白質固定化表面に、ヒト内皮細胞および密度傾斜法で採取した単核球を播種し、接着(培養1日目)・増殖(培養5日目)挙動を検討した。いずれの表面でも内皮細胞は接着1日目で伸展し、5日目では増殖していた。一方、単核球の場合では、いずれの表面でも1日目では接着したが伸展は限られており、5日目では伸展増殖する傾向を示した。これらのことから、アディポネクチンはVEGFと同様に内皮細胞の接着を促進し、且つ単核球成分の内皮細胞への分化を誘導している可能性を示した。●アディポネクチン固定化表面の意義:アディポネクチンがVEGFと同等の内皮細胞の接着・増殖性に加え、単核球の分化を促進する実験事実が見出された。これらの結果と最近の文献による(1)液相アディポネクチンはEPCの分化誘導を促進し、(2)遊走のchemoattractantとして作用すること、(3)EPCの老化を阻害する事等が報告されていることを統合すると、アディポネクチン単独あるいはアディポネクチン/VEGF混合蛋白層はEPCの血中捕捉・分化誘導・機能に単独又は協奏的に作用しうるものと期待でき、来年度のテーマとする。
2: おおむね順調に進展している
この2年間でアディポネクチン化学固定ステントが作成可能な事は確認された。またアディポネクチン単独の固定ステントよりはVEGFとの混合ステントの方が実際に臨床を含めた応用を考慮した場合には発展性が大きい事まで明らかとなった。その上で次年度より大型動物での検討に移る予定であり、概ね順調に進展している者と判断される。
本年度はVFGF混合アディポネクチン化学固定ステントをミニブタの頸動脈および大腿動脈に留置する。その上でEPCの補足、表面被覆に関して以下の検討を行う。具体的には1匹のブタの両側頸動脈、大腿動脈の計4カ所にVEGF混合アディポネクチン化学固定ステントを留置し1ヶ月後にEPCの補足および血管内皮細胞の被覆を確認する。特にアディポネクチンの作用はVEGFに引き寄せられたEPCを血中マクロファージによる除去や障害から保護する事で発揮される可能性があるため、マクロファージの遺伝子や蛋白発現についても検討する。またステント固定部位の血管の断層面でのvasa vasorumの発達、外膜側の変化について病理的に検討を進めるための準備を行う。
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