研究課題
薬剤溶出性ステントは期待されていた再狭窄抑制効果のみならず、ステント留置血管の内皮機能障害や、ステント留置後1年以上経過したあとにも超遅発性ステント血栓症を認めるなど、予想外の作用を認めた。溶出した薬剤(免疫抑制剤または抗癌剤)による冠動脈への影響を明らかにすることで、それに対する拮抗作用をもつ新しい薬などの開発につなげることが本研究の目的である。平成22年度は遠位側の非薬剤溶出性ステントに対する、近位側の薬剤溶出性ステントの影響を検討し以下のことを明らかにし既に学会報告した。現在本邦で承認されている最小の薬剤溶出ステントは2.5mmであるため、それ以下の血管径の病変に対しては非薬剤溶出性ステントを留置し、1本のステントのみでは治療できないびまん性病変に対しては、近位側に薬剤溶出性ステントを留置した。近位側のステントから溶出した薬剤がどの程度遠位側のステントの新生内膜増殖を抑制するかを、ステント留置8か月後に冠動脈造影と血管内超音波検査による定量的評価を行った。2本とも非薬剤溶出性ステントで治療した群に比べて、近位側を薬剤溶出性ステントで治療した群では、明らかに新生内膜増殖の抑制が確認され、再狭窄パターンも薬剤溶出性ステントと同様、限局性のものが多かった。多変量解析では近位側の薬剤溶出性ステント、遠位側の非薬剤溶出性ステントの長さとも再狭窄の独立危険因子とはならなかった。以上より、薬剤溶出性ステントを留置した冠動脈では、その薬剤の影響はかなり末梢まで及ぶことが分かった。
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