研究概要 |
薬物誘発性QT延長症候群の原因として、徐脈や低K血症など後天性の要因に加え、患者背景として心筋Kチャネル(IKr, IKs)やNaチャネルの遺伝子変異、SNPなどが潜在的な機能障害をもたらす可能性が指摘されている。しかしながら、これらのイオンチャネル遺伝子異常と薬物作用の相互作用については明かでない。 本年度は、1.健常者および遺伝性QT延長症候群(LQT1)患者からのips細胞の樹立を行った。インフォームドコンセントを取得したうえで、健常者及び遺伝性QT延長症候群LQT1とLAT7の患者の皮膚及びリンパ球を採取。株化した後にウイルスベクターを用いて、Oct3/4、Klf4、Sox2、c-Mycの4因子を遺伝子導入し、ips細胞を樹立した。幹細胞多機能分化性を免疫組織法及び遺伝子増幅により確認した。2.ヒトips細胞から心筋細胞を誘導した。樹立したips細胞を、細胞浮遊法にて拍動する心筋細胞に分化させた。細胞形態や心筋特異遺伝子の発現を、免疫組織染色法とRT-PCRにて確認した。3.ヒト再生心筋細胞の電気生理学的性質を検討した。心筋に分化した細胞塊標本に対し格子状多電極装置を用い、細胞外擬似心電図にて細胞塊の擬似QT時間や薬物に対する反応性を検討した。すなわち、健常者に比較し、LQT1及びLQT7患者由来の細胞塊では、QT時間が延長することを確認した。また、カテコラミンやIKr遮断剤の影響を検討している。現在、さらに細胞を単離し、活動電位、イオン電流を測定し、活動電位波形の諸指標(活動電位持続時間とその頻度依存性、静止膜電位、振幅等)、INa, ICaL, IKr, IKs, IKl, Ito, IKACh, IKATPなど多種イオンチャネル電流を測定している。
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