研究概要 |
薬物誘発性QT延長症候群の原因として、徐脈や低K血症など後天性の要因に加え、患者背景として心筋Kチャネル(IKr,IKs)やNaチャネルの遺伝子変異、SNPなどが潜在的な機能障害をもたらす可能性が指摘されている。本研究では、京都大山中らにより樹立されたヒトiPS細胞作成技術を用い、健常人と遺伝性QT延長症候群(LQT1,LQT2,LQT3,LQT7)患者から樹立したiPS細胞株から心筋細胞を分化誘導してQT延長を示す薬物を作用させ、遺伝子異常による潜在的イオンチャネル機能障害と薬物の相互作用の解析から、薬物誘発性QT延長症候群の病態解明とその予防・治療法を探索する。 本研究計画の実施期間である平成22年度から24年度までに、①健常者および遺伝性QT延長症候群(LQT1)患者からのiPS細胞の樹立 ②ヒトiPS細胞からの心筋細胞誘導 ③このヒトiPS細胞由来の心筋細胞を用いたMEA(multi-electrode array)による細胞外電位測定とそれに対する薬物の反応に関する実験を行った。その結果、LQT1患者由来の心筋細胞標本にてIKrチャネル阻害剤とIKsチャネル阻害剤の作用が臨床的薬効を反映していることを示した。またこのチャネル(1893delC)遺伝子をHEK細胞に発現させ、パッチクランプにてIKs電流がdominant-negative様に抑制されること、免疫染色によりその原因がトラフィッキング異常に基づくことを解明し、Cardiovascular Research (2012,Egashiraら)に報告した。また、LQT7(Anderson症候群)にても同様な検討を行い、特徴的な細胞内Ca動態を介した不整脈発生様式について知見を得ている。
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