研究概要 |
無症候性肺動脈性肺高血圧症に対する早期治療介入効果と運動負荷試験が肺高血圧症進展の予測法としての有効性を検証した。 心臓超音波検査にて三尖弁逆流速度から推定した収縮期肺動脈圧より肺高血圧症が疑われた膠原病患者26例のうち、安静時平均肺動脈圧が25mmHg未満の19例(平均年齢 64±11歳、女性 18例、WHO機能分類 I度 10例、II度 9例、強皮症 15例、MCTD 2例、Sjogren症候群 1例、皮膚筋炎 1例)に対して、右心カテーテル留置下にてエルゴメーターを用いた運動負荷試験を行い、血行動態各指標、動脈血酸素分圧、混合静脈血酸素分圧を評価した。 運動負荷による最大平均肺動脈圧が30mmHgを超過した17例を、治療介入群5例と非介入群12例に振り分けて、運動負荷時の血行動態の反応性の変化を追跡した。1年後の追跡が可能であった10例(治療介入群 4例(シルデナフィル 2例、ボセンタン 2例)、非介入群 6例)では、治療介入群、非介入群ともに安静時の平均肺動脈圧、全肺血管抵抗ともに、ベースラインから1年間での増加はみられなかったが、運動負荷時の平均肺動脈圧増加量(⊿MPAP=maximum MPAP-baseline MPAP, mmHg)は治療介入群で変化がなかったのに対して(27.8±6.1 vs 27.5±6.8, n.s.)、非介入群では有意に増加していた(23.7±9.5 vs 29.5±8.6, p<0.005)。⊿MPAP/⊿COは、治療介入群で8.5±2.1から4.5±1.5に低下したのに対し、非介入群では4.2±1.5から6.5±2.9に増加し、運動負荷時の血行動態の異常反応が薬物介入群では非介入群に比較し明らかに改善していた。 肺高血圧症境界領域群とされる軽症例に対する早期治療介入が肺高血圧症進展抑制に有効である可能性が示唆された。
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