研究課題/領域番号 |
22590787
|
研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
酒井 哲郎 琉球大学, 医学研究科, 教授 (40153845)
|
キーワード | 光イメージング / 膜電位感受性色素 / 心房 / 不整脈 / ブレビスタチン / カルシウムイオン / event-to-event variation / CCDカメラ |
研究概要 |
本年度もひきつづき、摘出心房標本で誘発された不整脈発現時の興奮波伝播パターンの膜電位感受性色素を用いた光学的マッピングのデータの蓄積をおこなった。その結果、ブレビスタチン誘発性撃発活動においては、電気刺激により誘発された最初の活動電位に続いて発現する第二の活動電位の発生源およびその伝播範囲が撃発活動のイベントによってひとつひとつ異なっていることが時間的・空間的マッピングにより明らかにされた。また、異所性自動能についても、その発現のイベントによって異所性ペースメーカーの位置が異なる例がみられた。これらの実験結果で見られるイベント間の発現パターンの違いに注目し、ここで見られる現象がカオス的ではないかという視点からのデータの解析を開始した。さらに、ブレビスタチン投与の他にも同様なイベント間の発現パターンの違いを示す不整脈発現の条件を探索すると共に、これまでに蓄積されていた実験性不整脈のデータについてもイベントごとの発現パターンの変化に注目し、見直しを行った。 一方、カルシウムイオンイメージングを用いた実験では、心房摘出標本に対してカルシウムイオンイメージングをおこなうための光センサーとして新型CCDカメラを導入し、その性能を検討した。また、従来から問題になっていた光学系では、従来の正立型大型顕微鏡に代えて、実体顕微鏡を改造した光学系を設計する方向へ方針転換し、測定システムの基本的設計を完成させた。さらにあわせて、もうひとつの重要な条件であるカルシウムイオンプローブを標本に取り込ませる至適条件の探索をすすめ、プローブとしてカルシウムグリーンをもちいて予備的実験を開始した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ブレビスタチン誘発性不整脈の発現パターンの解析はきわめて順調に進行し、その時間的・空間的パターンのイベントごとの発現変化が明らかにされ、研究当初には計画されなかったそのevent-to-event variationのカオス的特性についての解析という新たな研究上の展開が得られた。カルシウムイメージングについては、まだ予備的実験の段階である。これはおもに従来の光学系においては十分な励起光強度を得ることが出来ないことに起因していた。これについては、光学系の見直しにより良好な蛍光シグナルが得られるという技術的見通しが立ったため、来年度には改善されることが期待されている。
|
今後の研究の推進方策 |
ブレビスタチン誘発性不整脈の不整脈発現パターンの解析はすでにかなりの量のデータを蓄積することが出来た。今後はこの不整脈の発現の時間的・空間的パターンの解析を進め、そのカオス性についてもデータの解析をさらに進める。これは本研究の大きな目標である興奮波のカオス的伝播がその基礎にあると言われてきた心房細動のモデル化に重要な意義がある。さらに、われわれのこれまでの実験のデータから、このようなカオス的興奮現象の背景には、細胞内カルシウムイオンのダイナミックスの不安定性が示唆されているので、カルシウムイメージングのこの実験系への適用のためのハード面およびソフト面の両面での実験技術の確立を目指す。
|