研究課題/領域番号 |
22590794
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
井上 晃男 獨協医科大学, 医学部, 教授 (20168454)
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研究分担者 |
阿部 七郎 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (80275718)
田口 功 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (80316570)
佐久間 理吏 佐賀大学, 医学部, 医員 (10530199)
野出 孝一 佐賀大学, 医学部, 教授 (80359950)
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キーワード | 臨床心血管病態学 / 分子血管病態学 |
研究概要 |
当初は第一世代の薬剤溶出性ステント(DES)であるシロリムス(SES)、パクリタキセル溶出性ステント(PES)と第二世代のDESであるゾタロリムス溶出性ステント(ZES)とを比較する予定であったが、最近SESおよびPESは実臨床の場ではほとんど使用されなくなった。一方ZES植え込み10カ月後の剖検例の組織学的検討で再内皮化障害、潰瘍形成やマクロファージの集籏、ポリマー貪食像、新生血管などの炎症反応が観察されたことからZESであってもSES同様傷害血管の修復機転の遅延化、遠隔期の炎症機転の再燃が示唆された。こうした中新たに第二世代のDESとしてエベロリムス溶出性ステント(EES)が登場したことから、ZES、EESとベアメタルステント(BMS)の3者間で傷害血管の修復機転を比較することとした。植え込み1週間でピークとなる骨髄由来幹細胞(CD34+cell)および血管内皮前駆細胞(EPC : CD34+/CD133+/CD45^<low>cell)の末梢血への動員を評価するため、フローサイトメトリーでの基礎実験を繰り返し、安定した測定技術を確立した。その後少数例(8例)ではあるが実際のステント例で植え込み前、1週間後の末梢血のCD34+cell数およびEPC数の測定を行った。その結果、CD34+cell数およびEPC数とも植え込み前に比べ1週間後BMS例では増加、EESではやや増加、ZESでは減少した。特にEPC数の変化率はBMS : 48%, EES : 12%, ZES : -24%であった。ステント植え込み後の傷害血管の修復に必須の機転である再内皮化内皮細胞が一部骨髄由来EPCの分化によるものであることから、これらの結果はZESよりもEESのほうがより生理的に血管修復される可能性があることを示唆する。今後はさらに症例を加えて同様の検討を行うとともに、遠隔期のステント植え込み部位の血管修復状況を光干渉断層法(OCT)による画像診断で定量評価し、CD34+cell数やEPC数との関連を検討する。さらにはCD34+cellやEPCの動員に先立ち、植え込み後48時間後にピークを示す局所血管壁の炎症機転を各種炎症マーカーの測定により評価し検討を加える。またヒト末梢血単核細胞から血管内皮細胞への分化に対するゾタロロリムスおよびエベロリムスの影響を検討するin-vivoの実験に関しては、実験系を確立したので今後本実験を進めていく予定である。
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