研究概要 |
平成23年度に引き続き第二世代の薬剤溶出性ステント(DES)であるゾタロリムス溶出性ステント(ZES)とエベロリムス溶出性ステント(EES)における傷害血管修復機転を検討し、ベアメタルステント(BMS)との比較を行った。フローサイトメトリーによる末梢血血管内皮前駆細胞(EPC: CD34+/CD133+/CD45lowcell)数の評価では冠動脈ステント留置全38例(年齢70±9歳、BMS15例、ZES9例、EES14例)において留置前に比べ、7日目の変化率はBMS、ZES、EESの各群でそれぞれ74±59%、13±55% (P<0.05 vs BMS)、1±40% (P<0.001 vs BMS)であり、そのうち17例(BMS5例、ZES6例、EES6例)で光干渉断層法(OCT)による遠隔期(平均10か月)のステント表面の新生内膜被覆度の観察したところ、非被覆化率はそれぞれ2.4±4.0%、2.6±1.9%、41.6±25.6% (P<0.001 vs BMS)であった。そして7日目のEPC数の変化率と新生内膜非被覆化率との間には負の相関 (R=0.42, P<0.05)が見られた。また本年度は新たにin-vitroの検討を行った。健常例5例から末梢血幹細胞を抽出し、VEGFを含む内皮環境下での培養を行ったところCD31陽性血管内皮様細胞へと分化した。次にこれらの培養時にシロリムス、ゾタロリムス、エベロリムスの3薬を添加すると(0.01, 0.1, 1 nM)、コントロール(100%として)に比べ内皮様細胞への分化はシロリムス(各容量でそれぞれ28%, 19%, 2%)、ゾタロリムス(34%, 23%, 7%)、エベロリムス(44%, 47%, 4%)の順に抑制された。以上の結果から第二世代といえどもDES留置後の傷害血管の修復過程には問題があることが明らかとなった。
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