研究概要 |
目的)アミオダロン(AMD)は致死性心室性不整脈の第一選択薬である。我々は心肺蘇生時のAMDの薬理効果を明らかにするため、初年度はイヌ梗塞心を用いた生体実験において体表面QT時間、64誘導心表面マッピング電極による左室心表面の活動電位回復時間(ARI)を明らかにした。今年度はAMDによる左室貫壁性の影響を明らかにするため、健當心におけるプランジ電極を用いた再分極時間の検討を行った。 方法)ビーグル成犬(Bw z10kg±1.6)を用いて、チアミラール(15mg/kg,i.v.)+αクロラロース(50mg/kg,i.v.+Div)麻酔下で側方開胸とし、左室心表面を露出させた(n=4)。プラチナ電極を3mm毎に3個配した単極プランジ電極を4本用意し、中隔基部・中隔心尖部・前側壁基部・前側壁心尖部の心外膜より挿入した。心内膜(end)・中層(mid)・心外膜(epi)のプランジ電位をAMD(3mg/kg,div,2回まで追加投与)投与前後で計測し、4電極の平均を算出した。QRSの開始から最小のdv/dtをactivation time(AT),T波の最大dv/dtをARI,丁波の頂点をTpeak,T波の終点をTendとし解析を行った。 結果)AMD3mg/Kg1回投与後のATは15-19%増加したが、end-mid-epi 3層問のAT-dispersionは変化しなかった。追加投与を2回繰り返したが、AT,AT-dispersionともに変化しなかった。いっぼうARIは1回投与後にepiで最大27-33%延長し、ARI-dispersion(ARID)は34-53ms増加した。2回目の投与ではmid,endの順にARIが22-27%延長し、ARH)は27-38msに減少した。さらに3回貝の投与によりARIがendで優位に10-24%延長し、その結果ARIDは0-5msに減少した。Tpeakの薬剤負荷後変化はARI,ARID変動に類似した。しかしTendは有意な延長を呈さず、貫壁性dispersionの開大も示さなかった。 結語)AMDによる伝導時間延長作用は軽度で、貫壁性のばらつきを変化させることなく作用した。いっぽう活動電位回復時間の延長は用量依存性であり、少量では逆に貫壁性のばらつきを増加させた。再分極時間延長作用はT波の前半成分に有意な変化であり、後半部分の延長は認めなかった。
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