研究概要 |
【背景と目的】ニフェカラント(NIF) およびアミオダロン(AMD) はIII群抗不整脈薬であるが、静注射薬の薬理作用は大きく異なる。本研究ではイヌ梗塞心を用いて、心肺蘇生 (CPR)時の心室頻拍・細動(VT/VF)に対する両者の電気生理学的特徴を明らかにする。【方法】ビーグル成犬を用いて、チアミラール+αクロラロース麻酔下に左側方開胸下で、左前下行枝結紮による急性心筋梗塞を作成。高頻度連続刺激によるVT/VF誘発とCPR を繰り返し、高度循環不全の状態を維持した。高乳酸血症 (>50), 代謝性アシドーシス (pH<7.3) に至った時点で再度VT/VFを誘発し、薬理学的除細動目的にNIF(0.15mg/kg)あるいはAMD(5mg/kg)を静脈内緩徐投与した(各n=4)。計測項目は、薬剤投与前後で体表面心電図四肢誘導におけるQT時間(Fridericia 補正式)および、64 誘導心表面マッピングによる左室の活動電位回復時間のばらつき(ARID:最大と最小ARIの差分)とした。【結果】QTc intervalは、NIF投与群で290±26msec(投与前より2.7%増), AMD 投与群で289±22msec(投与前より2.9%増)と、両群ともに有意なQT延長はなかった。ARIDは梗塞作成後において70±5msecと作成前に比し63.2% 延長し、CPR直後は98±13msecと更なる延長を認めた。薬剤投与後、NIF投与群は51±16msec に減少(p<0.05 vs pre NIF),AMD 投与群は49±17msecに減少した(p=<0.05 vs pre AMD)。NIF群とAMD群の群間差異は認めなかった。【結果】CPRにおけるIII群抗不整脈薬は左室心表面の電気的不均一を改善し、抗不整脈効果を発揮する機序が示唆された。
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