研究概要 |
【背景と目的】ニフェカラント(NIF) およびアミオダロン(AMD) はともにIII群抗不整脈薬であるが、薬理作用は大きく異なる。本研究ではイヌ梗塞心を用いて、心肺蘇生 (CPR) 時の心室頻拍・細動 (VT/VF) に対する両者の電気生理学的特徴を明らかにする。【方法】イヌ梗塞モデル(n=16)に対して高頻度連続刺激によるVT/VF誘発とCPR を繰り返し、高度循環不全の状態を維持した。高乳酸血症および代謝性アシドーシスに至った時点で再度VT/VFを誘発し、NIFあるいはAMDを静脈内緩徐投与した。薬剤投与前後で計測した項目は以下である:体表面12誘導心電図Y誘導におけるQT時間, 64 誘導心表面マッピングによる左室のActivation time (AT) およびactivation-recovery interval (ARI), ARIのばらつき (ARID), プランジ電極を用いた左室貫壁性のばらつき (TDR)。【結果】1) 12誘導心電を用いたNIFおよびAMDのQT 延長作用は明らかではなかった。2) 左室心表面のAT, ARID計測では、NIFはCPRにより増大したATには変化を与えず、ARIDを縮小した。AMDはCPRにより増大したATをさらに増大させたが、ARIDは縮小した。3) 左室貫壁性のばらつきの評価では、CPRにより心外膜層と心内膜層の不応期が延長しTDRが増大した。NIFおよびAMDは心筋中層の不応期を延長させることでTDRを縮小させた。不応期の延長率はNIFでより高値であった。【結語】いずれのIII群不整脈薬にも左室心表面および左室貫壁性のばらつきの改善作用があることを明らかにした。その結果、左室の電気的不均一を改善し、抗不整脈効果を発揮する機序が示唆される。
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