研究課題/領域番号 |
22590797
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
佐藤 恭子 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (80335942)
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キーワード | 神経調節性失神 / アドレナリン / 自律神経 / アドレナリンレセプター / 遺伝子多型性 |
研究概要 |
1)プロトコルのアップデートと臨床研究計画の承認:本年度は東京女子医科大学医学部にて健常群、神経調節性失神(NMS)群双方のデータ収集とその検討を進めた。本年度では、前年度までに得られた健常群データを検討し、プロトコルの安全性と設定したアウトカムの妥当性の評価を行い、研究計画をアップデートした後、東京女子医科大学倫理委員会に提出した。2011年8月30日に全ての研究計画の承認をうけ、本学での研究を開始した。2012年3月1日の時点で健常人計10名、患者群9名のデータを収集することが出来た。引き続き、来年度早期に目標登録数達成(健常群、患者群それぞれ計20名)に向けて、研究への登録を続行する。 2)NMS患者群の臨床的特徴の評価・検討のためのデータベースの作成:NMS及び類縁疾患についての臨床疫学的調査のためのNMS患者データベースを作成した。本データベースはパスワードロックがかけられており、オフラインのパーソナルコンピュータ上での使用にてセキュリティ対策を行っている。 3)NMS患者、健常群の神経生理・薬理学的検討及びゲノム解析:本年度得られたデータに基づき、NMS群、健常群において自律神経機能検査(AFT)及びHead-up Tilt(HUT)試験とアドレナリン遺伝子多型性の解析を行った。NMS群においてHUT後の血漿ドーパミン濃度が有意な上昇が認められたが、患者群、健常群間で心臓自律神経機能に有意差は認めなかった。 α2Bアドレナリン受容体遺伝子(ADRA2B)の298bpにおけるグルタミン酸リピートの多型(12、もしくは9リピート)が確認された。HUTにより失神もしくは失神前症状の出た症例にはGlu9/9はみとめなかった。 Glu9/9リピートの個体はα2Bアドレナリン受容体ダウンレギュレーションの低下による持続的血管収縮により、体液量減少に伴う失神全症状が出現しにくいと考えられる。また、ADRA2Bの系統樹解析では、Gluリピートは進化に伴う増加が認められており、二足歩行に伴う血行動態保持との関連も示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の主研究施設の移動に伴い、現大学での倫理委員会による臨床研究の承認を受けるまでの時間を要した。また、パイロットデータ取得の際、データ記録・解析ソフトウエアのアップデートが必要であることが判明したため、その開発にリソースが必要であった。それ以外は研究環境は良好に構築できており、来年度前半にはほぼデータ取得を終了できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
来年度前半に健常群、患者群双方のデータ取得を完了し、最終解析作業の後、論文による成果発表を目指す。また今後は本研究で構築した臨床研究におけるデータ取得、蓄積、解析、データベース化の一連の手法を更に効率よくシステム化し、他の疾患における遺伝子多型と臨床的フェノタイプとを結びつけた研究を発展させ、臨床での診断と治療に繋げていきたい。
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