研究概要 |
平成22年度の研究の主目的は実際に破綻した粥腫ならびに易破綻性と思われる粥腫の力学的構造や組織性状の実データを収集し、破綻という力学的プロセスを詳細に解明し、またそれに基づいた客観的指標の構築と生体イメージング解析技術の基礎検討を開始することであった。その結果、まず、血管内エコー装置(現有)、ならびに血管内光干渉断層法装置(現有)から詳細な解析を行うための画像信号取り出しを定量的に可能とするシステムを構築できた。(以下、両装置を用いて粥腫の画像生信号を収集することを単にイメージングと呼ぶ。次に、そのシステムを用いて、あらかじめ同意をとった心臓カテーテルを行う患者や剖検患者、ならびにWHHLウサギから採取した冠動脈ならびに大腿動脈の粥腫などに対し、血管イメージングを行ってデータを収集した。さらにex vivo,in vitroの試料は、組織染色を施して、生物顕微鏡ならびに蛍光顕微鏡で各スライスを観察、画像取り込みを行い、それを3次元顕微鏡画像解析ソフトで、任意の方向で組織の空間的配置関係を解析できるようにした。これらのデータは、すべて、コンピュータ上のデジタルデータとして蓄えられていて、H23年度以降行う予定であるプラーク破綻の破壊力学的な解析に対し、比較的十分な数と質を有していて、本研究の目的に沿った研究実施を引き続き行いうるほどの有用なデータである。プラークの破綻の瞬間というのはリアルタイムに画像で捉えられた報告は世界にいまだなく、そのため、破綻した後の状態を画像化して破綻のメカニズムを逆推定するわけであるが、本年度研究結果は、それを行うに十分なデータ数に至ったということを示し、破綻の新たなメカニズムを見出すことができる期待をもちうるという意義を有する。
|