研究概要 |
H23年度はH22年度に収集した実際に破綻した粥腫ならびに易破綻性と思われる粥腫の力学的構造や組織性状の実データに基づき、プラーク破綻の力学的メカニズムの解析を3D画像構築ソフト、流体力学シミュレーションソフト、超高速度撮影(1200コマ/秒)などの各手法を用いて行った。まず3D画像解析ソフトにより、プラーク破綻を呈した99例の患者の血管内エコー像から輪郭抽出を行い、プラーク破綻像の3D構築を行った(1例の所要時間5-6時間)。その結果、プラークの破綻は決して単純なものではなく、shoulder type, middle type, slit type, residual fibrous cap type, fibrous cap bridge type, tunnel type, rupture in rupture typeなど多岐にわたって分類されることが判明した。そして、急性冠症候群発症の有無はプラークの破綻様式によりある程度決定されることも判明した。次に流体力学ソフトを用いて、プラークの破綻から急性冠症候群を発症するために必要な閉塞性血栓の形成様式について種々のシミュレーションを行った。またプラークアナログを用いた超高速度撮影より、プラークの破綻は必ずしもプラーク表面の線維性被膜から始まるわけではなく、voidと呼ばれるプラーク内空泡から始まりうることがわかった。以上より、プラークの破綻の過程が部分的にではあるが、徐々に明らかになり、またその方向性は決して単一でないことが判明した。プラークの破綻様式の3D的な多様性について示した報告は今まで例になく、プラーク破綻機序の全容解明と、予防処置の発見的研究に向けて大きな意義を有する成果がえられた。その方向性の中で、次期H24年度は本研究結果を統合して結論を得ていく予定である。
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