研究課題/領域番号 |
22590800
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
加賀谷 豊 東北大学, 病院, 准教授 (90250779)
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研究分担者 |
武田 守彦 東北大学, 病院, 助教 (30375084)
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キーワード | 心不全 / HIF / 心肥大 |
研究概要 |
慢性心不全に対する様々な新しい治療法が開発されているが、予後の改善は充分ではない。このため、さらなる新しい治療法の開発が急務である。本研究では、近年注目を集めている心腎貧血連関に関わるエリスロポエチン(EPO)-EPO受容体系の上流に位置し、低酸素状態に対する生体反応に重要な役割を果たすhypoxia-inducible factor(HIF)を慢性心不全の新たな治療標的とし、HIF安定化作用を持つプロリル水酸化酵素(PHD)阻害薬の心不全に対する有用性を明らかにすることを目的とした。8週齢の雄C57BL/6マウスを用いて、transverse aortaの狭窄による左室圧負荷肥大心モデルを作製した。このマウスに対して、PHD阻害薬TM6008の高用量(100mg/kg/日)および低容量(5mg/kg/日)を連日経口投与した。予備実験により、正常マウスにおいて、高用量ではヘマトクリットが有意に増加するが、低容量ではヘマトクリットがプラセボ群と差がないことを確認済みであった。2週毎に6週間後まで血圧測定と心エコー図を行った。6週間後には下大静脈を穿刺して血液を採取し、ヘマトクリット値を測定した。高用量投与群では、有意なヘマトクリットの上昇(約50%)を認め、低用量群ではプラセボ群と有意な差がなかった(約43%)。両群ともに、心機能、生存率に対照群と比べ有意差を認めなかった。高用量投与群では、正常マウスと同様に左室圧負荷肥大心モデルにおいても有意なヘマトクリットの上昇を確認した。前年度の研究では、EPO投与によりヘマトクリットが70%程度に上昇するプロトコールで、生命予後と左室機能の改善がみられたが、今回のPHD投与ではヘマトクリット上昇は軽度に留まっていた。今後、PHD阻害薬の投与量、投与期間等に関して、検討を加える必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウスを用いた左室圧負荷モデルにおいて、用いた2種類のプロリル水酸化酵素(PHD)阻害薬の用量と投与期間では、その左室機能と生命予後を改善することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の実験により得られた血液、心筋試料の生化学的、病理学的な検討を加える。また、用量および投与期間を変更することにより、左室圧負荷モデルにおいて、その左室機能と生命予後を改善することができるかを検討する。
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