研究課題
慢性心不全に対する新しい治療法が開発されているが、患者の予後の改善は充分ではなく新しい治療法の開発が必要である。本研究では、エリスロポエチンの上流に位置し、低酸素状態における生体反応に重要な役割を果たすHIFを新たな治療標的とし、HIF安定化作用を持つプロリル水酸化酵素(PHD)阻害薬の有用性を明らかにする。8週齢の雄C57BL/6マウスを用いて、胸部大動脈の狭窄により左室圧負荷肥大心モデルマウスを作製した。この モデルマウスに対して、PHD阻害薬であるTM6008の高用量(100mg/kg/日)または低容量(5mg/kg/日)を連日3週間経口投与した。対照群には溶媒を投与した。浅い麻酔下で経胸壁心エコー図を行い、左室拡張末期径、左室収縮末期径、左室短縮率を求め、左室リモデリングおよび左室収縮機能を評価した。ベースラインから3週後の左室拡張末期径の変化は、シャム手術群、対照群、低容量群、高容量群の4群間に差はなかった。一方、左室拡張収縮末期径のこの間の変化は、シャム手術群に比べ、他の3群で有意に増大した。これらの3群間に有意差はなかった。左室駆出率は、シャム手術群に比べ、他の3群で有意に低下した。これらの3群間に有意差はなかった。左室後壁厚は、シャム手術群に比べて3週間で他の3群で有意に増加し、一方これらの3群間に有意差はなかった。心室中隔厚の変化には、4群間で有意差がなかった。以上から、3週間の胸部大動脈狭窄による左室圧負荷マウスにおいては、左室後壁厚の増大、左室収縮末期径の増大と左室の収縮の指標である駆出率の低下がみられ、左室肥大と左室収縮性の低下が示唆された。プロリル水酸化酵素阻害薬は今回の投与量と投与期間では、左室肥大の進展および左室収縮性の低下の何れも予防できなかった。今後の課題として、より長期間あるいはより高容量の薬剤の効果を確認する必要がある。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
Tohoku J Exp Med
巻: 227 ページ: 83-91
doi:10.1620/tjem.227.83