研究概要 |
心臓の転写因子であるTbx5の翻訳後修飾を明らかにするため、ヒト細胞株HEK293にFLAG-Tbx5を過剰発現したFLAG抗体によるプルダウンアッセイを行い、質量分析法によりTbx5に会合する蛋白としてリン酸化酵素DNA-dependent protein kinase(DNA-PK)のcatalytic subunit(DNA-PKcs)とその制御蛋白(Ku80)を同定した。Ku80はKu70とともにDNA-PKcsを制御するため、GST-Ku70,GST-Ku80と^<35>S-Tbx5によるGST-プルダウンアッセイを行ったところ、Ku80ではなく、Ku70が直接Tbx5に結合する可能性が考えられた。Western blotによっても、野生型Tbx5とKu70,Ku80,DNA-PKcsとTbx5の会合を確認することができた。Ku80は普遍的に発現していて、マウスのin situ hybridizationでは、すべての組織が染色された。合成された組換えDNA-PKcs蛋白によるin vitroのリン酸化反応では、GSTと融合したTbx5の部分欠損変異蛋白は非特異的と思われるリン酸化のため、DNA-PKによるリン酸化候補部位を絞り込むことができなかった。そこでDNA-PKのリン酸化コンセンサスシークエンスをTbx5で検索すると候補部位が5カ所あったので、それぞれのセリン残基をアラニンに置換した変異体を作成したところ、S289AとS301Aはリン酸化が半分程度になり、S289A/S301Aの二重変異体はほとんどリン酸化されなかった。DNA-PK阻害薬を用いると、Tbx5によるANP(600)-luciferaseの活性化は軽度抑制され、Ku70,Ku80,DNA-PKcsのcDNAによる強制発現により、活性化が上昇した。S289A,S301A変異体は野生型に比較し、ANPの活性化能、Nkx2-5との協調能が低下していた。
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