研究課題
心房細動はメタボリック症候群や加齢・心不全・心房拡大に合併することが多いと報告されているが、これらのリスク因子と心房細動の直接的な因果関係は解明されていない。メタボリック症候群では全身の軽微な炎症があること、炎症が心房細動の危険因子であることから、心房の炎症は重要なファクターであると考えられる。本研究では、心不全・心房拡大やメタボリック症候群における心房炎症のメカニズムを包括的に解明し、心房細動に対する新たなアップストリーム治療のターゲットを探索することを目的として研究を行った。1心房伸展刺激における炎症と線維化、催不整脈性の検討昨年度、心房伸展刺激における炎症メカニズムについての検討を行ったが、今年度は炎症と、それに引き続く線維化、さらに催不整脈性の相関・経時的変化について検討した。その結果、マクロファージの浸潤は心房伸展刺激後早期に出現し、続いて炎症性サイトカインの発現・線維化の進展が進むことが判明した。催不整脈性はさらに遅れて見られた。また、伸展刺激においてマクロファージの浸潤を惹起するのは細胞外ATPであると判明しているが、ATPの一過性放出に関与する分子のノックアウトマウスの入手及び樹立を試みている。対象とする分子3種類のうち、2分子については既に実験可能な状態となっており、伸展刺激による反応をみている。2メタボリック症候群・高血糖における心房炎症メカニズムストレプトゾシンによる高血糖モデル及び食餌性肥満モデルを作成し、心房へのマクロファージ浸潤を検討し、さらに心房の炎症に関与する遺伝子・蛋白の発現変化を検討した。その結果、高血糖モデルではT細胞の浸潤に引き続いてマクロファージ遊走が惹起されること、一部のサイトカインがこのメカニズムに関与していることが示された。この炎症メカニズムに関するTLR4の関与について検討した。予想に反し、TLR4の関与は比較的低いと言う結果が得られている。
2: おおむね順調に進展している
心房伸展刺激下での炎症メカニズムに関しては、細胞外ATPがキーとなる分子であることをつきとめ、さらにATP放出に関与する分子も薬理学的には検討を終えた。さらに、炎症から線維化への変化についても新知見を得た。全体の計画目標として、ATP放出に関与する分子をノックアウトマウスやsiRNAを用いて検討することとしている。必要とするノックアウトマウス・トランスジェニックマウスが3ラインあるが、そのうち2ラインはすでに樹立/入手し、実験を開始している。残りの1ラインの樹立が困難であるが、それ以外は概ね順調に推移している。メタボリック症候群に関連する炎症メカニズムについては、TLR4の関与をノックアウトマウスを用いて検討した。TLR4の関与はそれほど高くはなかったが、心房炎症に関しては他の臓器とは異なるという手がかりを得た。
伸展拡大、進展刺激における炎症メカニズムについては、一過性の炎症の後に線維化が出現することが判明した。最終的に心房細動を引き起こすのは線維化が大きく関与しているため、炎症から線維化が進行する過程について焦点を絞り、検討する。当初計画には記載していないが、エピジェネティックな変化を含めて検討していく。また、心房炎症に関与する分子として細胞外ATPの役割を報告してきたが、ATP放出に関与する分子を、薬理学的手法に加えてノックアウトマウスを用いて検討していく。
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J Cardiovasc Magn Reson
巻: 14 ページ: 1
doi:10.1186/1532-429X-14-1