研究課題/領域番号 |
22590806
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
林 研至 金沢大学, 附属病院, 助教 (00422642)
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研究分担者 |
藤野 陽 金沢大学, 保健学系, 准教授 (40361993)
倉田 康孝 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (00267725)
山岸 正和 金沢大学, 医学系, 教授 (70393238)
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キーワード | 循環器 / 遺伝子 / 再生医学 / シミュレーション工学 / 生理学 |
研究概要 |
(1)若年発症および家族性徐脈症例のサンプル収集 先天性徐脈の発症機構を分子生物学的に解明するため、金沢大学病院を拠点として家族歴のある、あるいは若年発症(60歳未満)の先天性徐脈(洞不全症候群および心臓刺激伝導障害)症例56例のgenome DNAおよび臨床データを集積した。 (2)先天性徐脈の遺伝子変異検索および臨床像の把握 集積した先天性徐脈患者の末梢白血球よりリンパ球ゲノムDNAを抽出し、遺伝子解析を行った。遺伝子解析の結果、56症例中6症例(11%)より6種類の遺伝子変異を同定した。4症例に家族歴を認め、いずれも徐脈性不整脈以外の合併症を有していた。これらのうち、イオンチャネル遺伝子に変異が認められた2種類の遺伝子変異(KCNH2 R269WおよびSCN5A P1824A)について、動物培養細胞を用いてパッチクランプ法による電気生理学的検討を行った。さらに、コンピューターシミュレーションによる洞結節周囲細胞のペースメーカー活動の検討を行い、患者モデルにおいてギャップ結合コンダクタンスの上昇によりペースメーカー活動の停止を確認した。 (3)心筋前駆細胞(Cardiac progenitor cell, CPC)の単離・培養 新生仔ラット心筋細胞より心筋前駆細胞の単離・培養を試みた。培養細胞の中に一部自己拍動性の細胞群を認めた。また、心筋前駆細胞に対してパッチクランプ法を用いて細胞に発現しているイオン電流の計測を行った。38細胞中18細胞に遅延整流K電流および時間非依存性外向き電流を、31細胞中18細胞に内向き整流K電流を認めた。RT-PCRを行うと、Kv1.1とKv1.2の存在が確認され、これらは遅延整流K電流の原因遺伝子と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先天性徐脈の遺伝子変異の同定、パッチクランプ法による電気生理学的検討、シミュレーションについては計画通り進展していると思われる。心筋前駆細胞を用いた研究については、心筋前駆細胞を純粋に単離し、効率的に増殖させる方法、さらに洞結節様細胞に効率的に分化させる画期的な方法の開発が必要と思われる。
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今後の研究の推進方策 |
先天性徐脈100症例以上を目標に網羅的に集積し、遺伝子解析を行い、同定された遺伝子変異に対してパッチクランプ法による電気生理学的検討およびシミュレーション解析を継続して行う。新生仔ラット心筋組織、もしくは金沢大学附属病院にて診断のために実施された心筋生検より心筋前駆細胞を単離・培養し、機能的な心筋細胞に分化させる。分化の方法として、新生仔ラット心筋細胞と共培養させたり、洞結節様細胞に選択的に分化させると報告されているsuraminなどを利用する。さらに、この洞結節様細胞をミニ豚の洞不全症候群モデルに移植し、ペースメーカーとしての作用を示すかどうか検討する。心筋前駆細胞を用いた生物学的ペースメーカーの作成については、心筋前駆細胞から洞結節様細胞に大量に分化させる方法の確立など、解決すべき問題点がある。
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