研究概要 |
(1) 若年発症および家族性徐脈症例のサンプル収集:先天性徐脈の発症機構を分子生物学的に解明するため、家族歴のある、あるいは若年発症(60歳未満)の先天性徐脈(洞不全症候群および心臓刺激伝導障害)症例を新たに2例追加し合計58例のgenome DNAおよび臨床データを集積した。 (2) 先天性徐脈の遺伝子変異検索および機能解析:集積した先天性徐脈患者に対し、KCNQ1, KCNH2, SCN5A, SCN1B, MinK, MiRP1, KCNJ2, KCNJ3, KCNJ5, HCN4, ANK, GJA5, LMNAの遺伝子解析を行った。遺伝子解析の結果、58症例中7症例(12%)より7種類の遺伝子変異あるいは稀な遺伝子多型を、16症例(28%)より遺伝子多型を同定した。これらのうち、KCNA5 T527M遺伝子変異およびSCN1B T189M遺伝子多型に対してパッチクランプ法による機能解析を行った。KCNA5は超迅速活性化K電流をコードし、過去の検討では本変異により発現電流の有意な低下が認められていたが、我々の検討では発現電流に有意差は認められなかった。SCN1Bは心筋Naチャネルのβサブユニットであり、T189M多型の発現電流は野生型に対して有意に大であり、その活性化曲線は過分極側に偏移していた。 (3) 心筋前駆細胞(Cardiac progenitor cell, CPC)の単離・培養:新生仔ラット心筋細胞より引き続き心筋前駆細胞の単離・培養を試みた。培養細胞の中に一部自己拍動性の細胞群を認めた。心筋前駆細胞のみを単離・培養することは実際には困難であり、線維芽細胞などが混在するため、MACSを使用することにより磁気ビーズを用いてC-Kit陽性の心筋前駆細胞のみを分離し、パッチクランプ法を用いてイオン電流の計測を行った。5細胞中4細胞に遅延整流K電流を認めた。
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