研究課題/領域番号 |
22590811
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
常松 尚志 横浜市立大学, 医学研究科, 客員准教授 (70347300)
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研究分担者 |
奥村 敏 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (60233475)
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キーワード | シグナル伝達 / 循環器高血圧 / サイクリックAMP / 心不全 |
研究概要 |
[研究目的]本申請の目的はAC5特異的抑制剤を高齢者にも安心して使える心不全治療薬として開発することである。 [方法ならびに結果] 平成22年度中に合成した新規AC5選択的抑制剤の候補化合物の心臓型アデニル酸シクラーゼに対する抑制効果ならびに心不全治療薬としての有用性について下記手法を用いて検討した。 a)膜ACアッセイ 心筋組織膜タンパク内のAC活性に対する抑制効果を,野生型マウスならびに心臓型アデニル酸シクラーゼノックアウトマウス(AC5KO)の心臓から抽出した膜分画を用いて検討した。新規AC5特異的抑制剤のAC活性抑制作用はWTから抽出した膜分画のAC活性抑制効果に比較して、AC5KOから抽出した膜分画のAC活性抑制効果は有意に少なかった。以上の結果から新規AC5特異的抑制剤はAC5に対する選択的な抑制薬であることが示唆された。 b)サイクリックAMP accumulation assay ラット胎児培養心筋細胞をフォルスコリン刺激して細胞内に蓄積したcAMPレベルに対する低下効果について検討したところ新規AC5特異的抑制剤はフォルスコリン刺激して細胞内に蓄積したcAMPを有意に低下させた。 c)心不全マウスモデルを用いて検討 イソプロテレノールを用いた慢性カテコラミン刺激心不全マウスモデルを用いて検討した。コントロール群に比較してイソプロテレノールと新規AC5特異的抑制剤を併用して投与したマウスでは心機能低下が有意に抑制された。以上の結果は新規AC5特異的抑制薬が心不全治療薬として有用であることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規AC5特異的抑制薬が、平成22年度に確認した既存のAC5特異的抑制剤である抗ヘルペス薬(ビダラビン:商品名:アラセナA)と同程度に心不全ならびに不整脈抑制作用を有することが確認された。また平成22年度中に得られた研究成果をもとに2件の特許申請を行うことができた。すなわちビダラビンが、心機能や呼吸抑制を起こさずにベータ遮断薬と同等の心不全ならびに不整脈治療が可能であるという特許申請である(特願2010-240301,特願2011-222421,PCT/JP2011/74098)。平成23年度には横浜市立大学付属病院倫理委員会にて臨床治験が承認(B110512007)され、平成24年1月から循環器内科、心臓血管外科、皮膚科にてビダラビンの不整脈効果について医師主導型臨床治験が開始された。
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今後の研究の推進方策 |
平成22年度より大手製薬メーカーとの共同研究を開始したが、同製薬会社の開発研究部門との協議をおこない臨床試験に時間のかかる心不全で最初の適応を申請するのではなく、短期間で効果判定が可能な不整脈での適応取得を目指して臨床試験を進めていくことにした。 [研究スケジュール] (1)平成24年前半:現在進行中の術後心房細動症例(心臓血管外科)、心室性期外収縮ならびに一過性心房細動症例(循環器内科)、不整脈合併帯状疱疹症例(皮膚科)をターゲットにして同薬剤のヒトでの治療効果に関するデータのさらなる蓄積を行い、医師主導型臨床試験を継続してビダラビンの不整脈治療薬としての新規適応を取得する。 (2)平成23年度のAC5に対する特異的抑制作用が確認された新規化合物の毒性試験を行う。動物実験で心不全ならびに不整脈抑制効果が確認できた投与量(15mg/kg/day 7日間)を投与した群と非投与群の肝機能(GPT,GOT)、腎機能(BUN,クレアチニン)、行動解析を行う。またビダラビンは中枢移行性があるが、新規化合物は水溶性のため中枢移行性がないことが期待される。抗ヘルペス剤としてビダラビンを使用する場合は投与期間が10-14日であるが、心不全あるいは不整脈が治療の対象疾患である場合は投与期間が長期になる。したがって中枢移行性は無いことが望ましい。新規化合物の中枢移行性についてアイソトープ標識法あるいはストレキニーネ投与実験(投与開始-痙攣-死亡までの時間を測定)で評価する。
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