心臓樹状細胞(DC)の役割とその制御機構を明らかにする目的で、計画に従い、①心筋ミオシン上の炎症惹起性エピトープ (CM2)に特異的なT細胞株(CMT) を作成し、その移入に伴うDCの活性動態を解析した。②次いでCMTをGFPラベル化し、その体内動態を明らかにした。その過程で、CMTは移入後速やかに消失し、新たなnative T 細胞 (NT) が出現した。この現象はエピトープスプレンディングとT細胞population変化で説明できるが、そのいずれにもDCは重要な役割を担っている。そこで、最終段階で、GFP陰性CD3陽性細胞を心筋組織より分離し、T細胞受容体レパートリー解析、Th phenotype解析、さらにDCの動態解析をフローサイトメトリーで行った。しかし、キメラモデルの作成に手間取り、十分な解析成果を得るには至らなかった。GFP陽性DCの心筋組織内への動員とその近傍におけるTh17 T細胞からなる炎症惹起と持続、DCにおけるTh17免疫を制御するIL-23/-27バランスのIL-23へのシフトとこのサイトカインバランスを制御するTLRシグナル伝達経路の同定などは依然として課題として残った。 一方、Cylindromatosis (CYLD)はNF-κBの抑制因子であり、かつ自然免疫の重要な活性化因子でもある。このCYLDの発現機序は現在まで不明のままで推移していた。ところが、今回の一連の研究を通じて、炎症で活性化されたマクロファージを検索していたところ、interferon regulatory factor (IRF)-3がこの活性化機構に強く関与していることを見出した。このシグナル系は心筋炎を惹起し、劇症化させ、遷延化するものと推察される。現在、このシグナル系と心臓樹状細胞との関わり合いを集中的に検索中である。 また何れの成果も論文として投稿中である。
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