研究概要 |
(ヒトiPS由来心筋細胞の作製と表現型解析) 山中3因子および4因子をレトロウイルスベクターを用いてヒト線維芽細胞に導入することによりヒトiPS細胞を樹立し,hanging drop法による心筋細胞への分化誘導を行った。さらに、ヒトiPS由来心筋細胞がNKX2.5、GATA4、MEF2などの心筋転写因子、ANP、BNPなどの心筋マーカー遺伝子およびトロポニン、アクチン、ミオシン軽鎖/重鎖などの心筋収縮関連蛋白を発現し、形態的および遺伝子発現的にも心筋細胞であることを免疫染色およびPCR法で確認した。 (心筋イオンチャネルや収縮蛋白の発現調節機構の解明) 心筋興奮収縮連関のCa^<2+>制御蛋白であるリアノジン受容体、筋小胞体Ca^<2+>ATPase(SERCA2A)、フォスフォランバンの発現も確認した。また、心筋イオンチャネル(SCN5A、CACNA1、KCNQ1,KCNE1、KCNE2、KCNJ2,HCN1,2,4など)の遺伝子発現をPCR法で確認した。心筋分化後早期には、HCNおよびCACN(T-type)などの結節細胞に発現している遺伝子の発現が優位であったが、中期以降KCNJ2およびSCN5A遺伝子発現が増加傾向にあった。この結果は、iPS心筋細胞のチャネル発現が成熟とともに変化し、遺伝子発現的に結節型から作業心筋型へ変化することを示唆するものであった。さらに、微小電極法により活動電位を記録したところ、チャネル遺伝子発現変化と同様、活動電位波形は、iPS心筋樹立後の培養期間により変化した。特に活動電位持続時間の延長とプラトー相の出現を認めるようになり、静止膜電位も過分極側にシフトしたことより、培養とともに電気生理学的にも結節型から作業心筋型に変化することが明らかとなった。
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