本研究の目的は、「心筋リモデリングにおける新規線維化のメカニスムの解明を試みる。特に心筋線維芽胞の機能・動態に着目し、心筋リモデリングおけるその病態生理学的関与を明らかにすることにより、その点を標的としたより有効で新しい心不全の予防、治療法を開発する」であり、【課題(1)】心筋線維芽細胞におけるS100A4蛋白の役割と心筋リモデリングに対する影響【課題(2)】心筋線維化におけるバッゾプレッシン(vasopressin)系の役割【課題(3)】内皮-間葉転換(EndMT)の制御と心不全治療への応用からなる。 本年度は、課題(1)、(2)のバゾプレッシンの心臓線維化に対する役割を中心に検討した。バゾプレッシンレセプターサブタイプ特異的ノックアウトマウス(V1aR KOおよびV1bR KO)に対して急性圧負荷を与えた場合異なるリモデリングの進行を示すことを見出した。特にV1aR KOでは線維化の抑制がおこりその結果として心不全の発症抑制が明らかであった。アンギオテンシン投与に対しても拮抗作用を示し、V1a受容体シグナルはアンギオテンシンシグナルの下流において線維化促進の重要な役割を果たしていることが明らかになった。一方、V1bR KOでは、心肥大が促進され心不全は進行すし早期に死亡に至るも、線維化自体はWTマウスと比べ著変は認めなかった。従ってV1a受容体ないし下流のシグナルの特異的な遮断が新たな心不全治療となる可能性が示唆された。
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