本研究の目的は、「心筋リモデリングにおける新規線維化のメカニズムの解明を試みる。特に心筋線維芽細胞の機能・動態に着目し、心筋リモデリングおけるその病態生理学的関与を明らかにすることにより、その点を標的としたより有効で新しい心不全の予防、治療法を開発する」であり、【課題①】心筋線維芽細胞におけるS100A4蛋白の役割と心筋リモデリングに対する影響 【課題②】心筋線維化におけるバッゾプレッシン(vasopressin)系の役割 【課題③】内皮―間葉転換(EndMT)の制御と心不全治療への応用からなる。 最終年度の本年度は、昨年度までのS100A4およびV1aレセプターが心臓線維化に関わるという結果を踏まえ、その詳細なメカニズムの検討を行った。ともに心臓線維芽細胞の活性化と関与し、そこでのコラーゲン発現の制御により心臓線維化に関与することが明らかになった。S100A4はp53との結合を介してその増殖を制御するが、一方V1aレセプター活性化は直接増殖を惹起した。一方、課題③に関しては、S100A4はEndMTの関連因子と報告されていたが、S100A4ノックアウトマウスおよびvitroのノックダウンの系において、EndMTが抑制されているという結論は得られず、十分な検討を行えなかった。今後は、課題①、②に関して心不全治療への応用を検討するため、S100A4ブロッキング抗体およびV1aレセプター受容体拮抗薬等を用いて研究を行う予定である。
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