研究概要 |
1)PAI-1は心筋梗塞領域の血管壁を保護し、血管内皮細胞と基底膜の接着を安定化させ、心筋梗塞後の心筋間質への出血や炎症細胞浸潤を抑制することで心破裂を抑制し、梗塞後の心筋リモデリングを抑制することが以下の研究成果で明らかとなった。 ●PAI-1TGマウスと正常マウスに心筋梗塞モデルを作成すると、梗塞後の心破裂率はPAI-1TGマウスで有意に低下した。心エコー検査の結果からPAI-1TGマウスでは左室リモデリングが抑制され、梗塞28日後の心機能は正常マウスと比較し温存されていることが分った。心筋梗塞領域の組織像は正常マウスと比較しPAI-1TGマウスでは出血は軽度であり、炎症細胞浸潤は抑制されていた。一方、PAI-1KOマウスでは正常マウスと比較し梗塞後の心破裂率は著しく高率となり、心筋梗塞領域に著しい出血像と顕著な炎症細胞浸潤を伴っていた。 2)心筋梗塞後の血管破綻、心破裂抑制の機序としてuPA亢進によるplasminogen-plasmin systemの活性化の結果MMPs (MMP-9,MMP-2)の活性亢進が細胞外マトリクスを分解することにより、冠動脈微小血管壁の基底膜を分解し心破裂を起こし易くしていることが以下の研究成果から示唆された。 ●PAI-1TGマウスと正常マウス及びPAI-1KOマウスに心筋梗塞を作成し、時系列で心筋細胞を採取し心筋梗塞領域でのMMP 活性をzymographyで測定した。PAI-1TGマウスでは正常マウスと比較し心筋梗塞後のMMP活性が有意に抑制されていた。一方PAI-1KOマウスでは心筋梗塞後のMMP活性が有意に増加していた。以上よりMMPs (MMP-9,MMP-2)活性の抑制が血管内皮の保護に関与し、心破裂の抑制や心筋梗塞後急性期の心筋リモデリングの抑制に強く関与していることが示唆された。 これらの研究成果をAHA、日循に学会報告した。
|