研究課題/領域番号 |
22590822
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
平田 恭信 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (70167609)
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キーワード | 移植・再生医療 / 遺伝子 / 細胞・組織 / 循環器・高血圧 / 生理活性 |
研究概要 |
【緒言】メタボリック症候群の初期症状として勃起不全(以下ED)が認められ、逆にED男性の90%は糖尿、高血圧、高脂血症、肥満を有しており、陰茎海綿体内での海綿体平滑筋・内皮、神経の異常が全身の心臓血管系異常に先立って現れてくる。EDに対する治療は、現状では実質的に、勃起改善治療薬の処方のみであり、糖尿病、動脈硬化症例での機能回復は限定的であることから有効な再生医療が期待される。 【研究方法と結果】我々はラットから皮下脂肪由来幹細胞(ASC)を安定的に誘導することに成功した。ラット勃起モデルを用いて、勃起状態の定量化(海綿体内圧と動脈圧の測定)を行っている。STZによる糖尿病ラットを用いて、5.0×10^5個のSVF/MC幹細胞を亀頭部海綿体から類洞静脈洞に注入。1)勃起機能が幹細胞により改善した。2)糖尿病によってもたらされる海綿体構造の破綻に対して、ASC投与はこれを改善した。VE-Cadherinやコラーゲンやエラスチン繊維の増生を認めた。3)ASCが分泌するparacrine factorとしてAdrenomedullin(AM)が、ASC培養上清に非常に多く存在し、AM産生を抑制させるsiRNA投与でASCからの分泌が抑制されることを示した。AMの作用機序は、1)細胞の遊走(マクロファージ)、分化制御、2)血管内皮細胞再生、抗炎症作用、血管新生の調整、3)体液量調節作用などの多彩な生理活性を示す。この様なAMの作用が、我々の誘導したASCの海綿体再生能にどの程度関与しているかを検討するためにAMのノックダウンや過剰発現が海綿体構造に与える変化を評価したところ,海綿体再生にAMがparacrine factorとして大きく関与していた。 【結論】我々は再生医療におけるASCの利用の可能性を考え、ラットASCが血管再生、海綿体構造再構築、勃起機能改善に有効であることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度、ASCによりラット血管傷害モデルにおいて内皮修復が促進されることを示した。本年度は人への応用を念頭において海綿体内皮機能の改善作用を示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果を踏まえ、冠動脈疾患の内皮機能の改善を目指し、実臨床におけるステント治療時の血管保護を想定した実験を進行中である。動物実験に終始するのではなく、多少高率は悪くともヒトでも可能な治療介入方法を模索している。
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