研究概要 |
アルドステロン(Aldo)は、最近心血管系病変のリスクファクターとして脚光を浴びている。以前我々は血管内皮の内皮型一酸化窒素合成酵素の機能がAldoにより抑制される機序を報告したが、今回チアゾリジン誘導体などの抗糖尿病薬の下流で働くとされるAMP-activated protein kinase (AMPK)の抗動脈硬化作用が、ミネラロコルチコイド受容体(MR)活性化による血管障害の抑制の可能性について検討した。AMPKの恒常活性化型変異体(NcaAMPK)または優勢阻害型変異体(dnAMPK)をHUVECで過剰発現させ、Aldoの細胞内シグナルへの影響を検討した。血清0.2%(charcoal処理済み)のMediumにおいてインキュベートした後、Aldo10^<-7>Mで刺激時間し、刺激時間を5分~24時間の間で適宜選択してWestern Blotで評価した。1)MAPkinase系:ERKに関しては15分と2~4時間と2峰性のリン酸化のピークを認めた。NcaAMPKはその両者を抑制したが、dnAMPKでは変化がなかった。2)NF-KB系:IKBのリン酸化と上流のIKKαβのリン酸化をNcaAMPKは抑制したが、dnAMPKでは差がなかった。3)TGF-β系刺激後4時間で見られるSmad3のSerリン酸化がNcaAMPKで抑制された。4)炎症性蛋白ではosteopontinの発現がNcaAMPKで抑制されたが、その他eSelectin, ICAM-1,MCP-1について抑制は認められなかった。現在それらの機序について、活性酸素種を中心に検討中である。メトホルミンやチアゾリジン誘導体でのAMPKが活性化の影響も検討したが、これらの薬剤によるAldoによる炎症シグナルの抑制効果は、NcaAMPKよりもAMPKの活性化が弱いため、現在のところ十分評価できていない。
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