【背景】ミネラロコルチコイドの心血管系への作用メカニズムは未解明な点が多い。一方でビグアナイドなどの抗糖尿病薬はAMP-activated protein kinase (AMPK)を活性化し、抗動脈硬化作用を示すと考えられ、AMPK活性化がミネラロコルチコイドによる血管障害をも抑制できる可能性がある。その仮説を示すために、初年度にin vitroでその分子機序を明らかにし、二年目に開発したトランスジェニック(TG)マウスを用いてin vivoで検討した。 【結果】血管内皮特異的なTEK promoterの下にrtTAを発現できるマウスと、TREの下にdominant negative (dn) AMPKもしくはconstitutively active (ca) AMPK cDNA遺伝子をもつマウスを交配してTGマウス作出した。ドキシサイクリン(DOX)投与で目的遺伝子が発現する。最初にDOX処置による内皮特異的発現を免疫染色で確認した。次に野生型マウスと両TGマウスに4週間DOCA・食塩投与して血管内皮依存性血管拡張反応を比較した。血圧は3群間で統計的有意差はなかった。caAMPK DOCA・食塩マウスでは野生型と較べて有意に血管拡張反応が増強しており、逆にdnAMPKマウスでは血管拡張反応は有意に減弱していた。caAMPK DOCA・食塩マウスの血管拡張反応の増強はL-NMMA前投与で完全に消失した。 【意義・重要性】AMPKの血管保護作用はeNOS-NO系を介していることが示された。テルミサルタン、チアゾリジン誘導体などAMPKを活性化する薬剤の投与がcaAMPKと同じ効果があるのか、その効果がdnAMPKマウスで消失するのかまで検討できなかった。しかし今回の検討でその可能性は十分あることが示せたので、今後引き続き薬剤投与の検討も予定通り実施していく予定である。
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