研究課題/領域番号 |
22590824
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
渡辺 昌文 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (60360096)
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研究分担者 |
真鍋 一郎 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (70359628)
今井 靖 東京大学, 医学部附属病院, 特任講師 (20359631)
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キーワード | 転写因子 / ストレス応答 / 血管新生 / 線維化 |
研究概要 |
我々は、次のような仮説に基づき、研究を進めている。 (1)Mrf-2/ARID5Bは、ストレスに応答して発現し、ホメオスターシスを維持する役割をはたす。 (2)Mrf-2/ARID5Bは、核内受容体転写-制御コンプレックスの一員として転写調節に寄与する。 1.ARID5B遺伝子によるアディポネクチン発現の制御 Promter Assayにて、Adiponectin promter上のPPREに、ARID5Bαが結合している可能性が示されている。このPPREの近傍に、ARID domainが存在しており、ここにARID5Bαが結合していることを、Chromatin IPassayにて解析中である。また、脂肪細胞特異的ARID5B nullマウスを作成中である。 2.ARID5B遺伝子による血管新生の制御 マトリゲルを用いた血管新生モデルで、ARID5B heteroマウスでは、血管新生が低下していた。さらに、ARID5 Bnullマウスの骨髄を移植したwild typeのマウスでも、同様に血管新生の低下が観察された。このことから、ARID5B nullのマクロファージの機能に問題があるとの仮説をたてた。BMDM(骨髄由来のマクロファージ)の培養上清では、血管内皮細胞の遊走が低下することを見いだした。さらに、現在、RNAsequence技術により、ARID5Bのターゲットであり、血管新生に関与する蛋白の同定、さらには、その発現機構の解析を続けている。、 3,ARID5B遺伝子によるAngiotensinII負荷時の心臓線維化の制御 マウスにAngiotensinIIを負荷すると、心臓の線維化が進む。preliminaryな結果であるが、ARID5B heteroマウスで、同様な実験を行うと、心臓の線維化が増強した。これは、ARID5B遺伝子が線維化を抑制している可能性を示しており、現在、どの細胞のARID5Bが重要であるのか、解析を加えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
いくつかの問題がある。まず、抗体作成の困難さである。exogenousな発現を認識する抗体ができるが、組織染色や、Chromatin IPなどで使用可能か慎重に検討を重ねている。また、遺伝子改変マウス作成の時間的な問題、および、ARID5B null miceの出生数が非常に少ないことも、in vivo解析の難点となっている。最後に、他の研究室でも、この遺伝子の機能解析が全く進んでおらず、未知の研究であることも時間が掛かる理由である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、ARID5Bが、ホメオスターシスを維持する役割については、アディポネクチンの発現・血管新生に重要で、圧負荷による心筋の線維化を抑制している可能性と、3つのモデルを用いて、知見が集積してきている。現在、いくつかのConditional knock outマウスを作成中であり、本年度はさらに解析が進むと思われる。また、転写制御の解析については、抗体の使い方を工夫するか、場合によっては、Tagを利用して、Chromatin IPによる解析を進める予定である。
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