平成22年度にはまずはじめにLTAにより実際に誘導されるMicroRNAの存在をマイクロアレイを用いて検証を行った。培養系ではTHP1単球細胞をphorbol 12-myristate 13 acetate (PMA)にて刺激すると培養皿に付着してマクロファージへの分化が誘導されるが、ここに酸化LDL(oxLDL)を加えると、マクロファージへと分化したTHP1細胞はoxLDLを取り込んで泡沫化する。そこでPMAによりマクロファージに分化したTHP1細胞にLTAを投与してMicroRNAの発現の変化を網羅的に解析した。その結果、このマイクロアレイを用いた網羅的なMiRNAプロファイリングにより、マクロファージへ分化したTHP1細胞においてLTAにより発現の影響を受けるMicroRNA群を複数検出したが、これらは必ずしも形態学的表現型に関連しないことも明らかとなった。そこで我々の仮説を証明するMiRNA候補の絞り込みを行った。すなわち急性心筋梗塞症例の血清にはMiRNAが漏れ出ていることが明らかになっているが、もしマクロファージにおいてLTAにより発現の影響を受けるMicroRNAが心筋梗塞後も発現していれば、心筋梗塞の再発につながると考えられることから、大阪急性冠症候群研究会の血清バンクを用いて、心筋梗塞退院後早期に心血管自己を発症した症例と、生存退院後5年間一度も心血管事故を発生せず、良好に経過した症例間で差を認めるMiRNAを抽出し、H22年度に抽出したMiRNAと比較検討することとした。その結果、心筋梗塞後早期に心臓死亡した症例ではMiR155とMiR380*の2つが生存退院時から上昇していることが明らかとなった。
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