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2010 年度 実績報告書

心血管病変形成におけるコリン作動性抗炎症経路の役割の解明と治療への応用

研究課題

研究課題/領域番号 22590830
研究機関九州大学

研究代表者

市来 俊弘  九州大学, 大学院・医学研究院, 客員准教授 (80311843)

キーワード迷走神経 / 抗炎症 / サイトカイン / 酸化ストレス / 動脈硬化 / ドネペジル / コリンエステラーゼ阻害薬
研究概要

【背景と目的】迷走神経刺激により、慢性心不全ラットの長期生存率が改善し、リポポリサッカライド投与による敗血症モデルでの炎症反応が減弱すると報告されている。この経路はコリン作動性抗炎症経路として知られている。可逆的コリンエステラーゼ阻害薬であるドネペジルはアルツハイマー病患者の認知機能を改善するが、心血管病の形成へどのような影響を与えるかについては明らかにされていない。本研究では、ドネペジルによる薬理学的な迷走神経刺激がアポリポ蛋白(Apo)E欠損マウスの動脈硬化に与える影響について検証した。
【結果】10週齢のオスのApoE欠損マウスに高脂肪食およびアンジオテンシンII(490ng/kg/day)を投与し、動脈硬化モデルを作製した。ドネペジルおよびフィゾスチグミン(同じくコリンエステラーゼ阻害薬)を4週間投与した。ドネペジルの経口投与(5mg/kg/day)およびフィゾスチグミン投与(2mg/kg/day)によりマウス大動脈におけるOil red O陽性の動脈硬化病変は有意に抑制された。心拍数、血圧、コレステロール値に有意な変化は認めなかった。大動脈弁輪部へ浸潤するマクロファージも有意に抑制された。ドネペジル投与により大動脈におけるMonocyte chemoattractant protein-1とTumor Necrosis Factor-αの発現、NADPH oxidaseの活性および活性酸素の産生が有意に抑制された。
【結論と意義】本研究により、ドネペジルによる薬理学的な迷走神経刺激には顕著な抗酸化、抗動脈硬化作用のあることが明らかとなった。フィゾスチグミンでもほぼ同様の結果が得られたので、この作用はアセチルコリンの分解抑制に基づくと考えられる。この結果を他の動物モデルやヒトの動脈硬化にあてはめるには注意が必要であるが、コリンエステラーゼ阻害薬は動脈硬化性心血管病変の新たな治療法として有用である可能性が示された。インスリン抵抗性の形成など様々な慢性疾患において慢性炎症の関与が示唆されている。コリンエステラーゼ阻害薬のもつ抗炎症・抗酸化作用が他の慢性疾患の治療へも応用できる可能性が示唆される。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2010

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Acetylcholinesterase inhibitors attenuate atherogenesis in apolipoprotein E-knockout mice.2010

    • 著者名/発表者名
      Inanaga K, Ichiki T, Miyazaki R, Takeda K, Hashimoto T, Matsuura H, Sunagawa K.
    • 雑誌名

      Atherosclerosis

      巻: 213 ページ: 52-58

    • 査読あり
  • [学会発表] MDM2阻害薬Nutlin-3による血管傷害後新生内膜形成の抑制-新生内膜形成における転写因子の役割2010

    • 著者名/発表者名
      市来俊弘
    • 学会等名
      第51回日本脈管学会総会
    • 発表場所
      旭川グランドホテル(北海道)
    • 年月日
      2010-10-14
  • [学会発表] Anti-atherogenic and anti-angiogenic effect of cholinesterase inhibitors.2010

    • 著者名/発表者名
      Ichiki T, Inanaga K Miyazaki R, Sunagawa K.
    • 学会等名
      19^<th> Intrenational Conference of the Cardiovascular System Dynamics Society
    • 発表場所
      九州大学百年講堂(福岡)
    • 年月日
      2010-09-22

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公開日: 2012-07-19  

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