研究概要 |
健診センターの人間ドック受診者から本研究参加者を1,505名募り、性別、年齢、体重、喫煙歴、既往歴、総IgE値、抗原特異的IgE、肺機能検査などのデータを抽出した。さらに全血よりゲノムDNAを抽出し、約60万ヶ所の遺伝子多型についてゲノムワイドにタイピングを行った。 本研究は"前向きコホート研究"であるが、研究開始時点のコホート臨床データ解析は必要である。また参加者の約80%が反復受診者であるため、経年変化などを後ろ向きに解析することも可能である。最初に、喘息、COPD、陳旧性肺結核などの肺疾患罹患者と肺機能検査で1秒率<70%の参加者を除外した1,369名について解析を行った。この集団を%1秒量<80%(217名)と≧80%(1,152名)の2群に分け臨床データを比較した。低1秒量群では高1秒量群よりも有意に喫煙指数が高かった。また低1秒量群のほうが1秒量の経年減少量が有意に大きく、この違いは喫煙の程度には関係なかった。従って肺機能正常者であっても低1秒量群では、前向き追跡をすると閉塞性肺疾患の発症率が高くなる可能性があると考えられた。さらに肺疾患罹患者を除外した全参加者において、喘息発症に関係すると報告されているTSLPと酸化ストレス防御系のNrf2の遺伝子多型について肺機能との関連を解析した。その結果、TSLPの2個の機能的一塩基多型(SNP)が%1秒量と1秒率に有意に関連し、またNrf2のイントロン1上のSNP(rs6726395)が経年的な1秒量の減少に関連していることが明らかになった。これらのSNPに変異を持つ個体が閉塞性肺疾患を発症し易いか否かについて前向きに検討を加える予定である。 前向き研究については、全参加者にアンケート用紙を郵送し、閉塞性肺疾患の発症について解析している。アンケートの返信率は約60%である。今後アンケートが返信されてきた集団について前向きに検討を加える予定である。
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